臨床心理学特論 015 自我心理学 E.F.エリクソン
■ 臨床心理学特論 015 自我心理学 E.F.エリクソン ■
▼ 1: E.H.エリクソン
アメリカの精神分析学者。ユダヤ系ドイツ人として生まれ、アンナ・フロイトに指導を受け児童精神分析を学ぶ。その後、ナチスのユダヤ人迫害を受けアメリカに亡命。
エリクソンはハルトマンの自律的な働きの中で、人の心理・社会的は発達に注目した。
自我の自律的発達が対象関係と愛情交流によって可能になるという事実に着目し、それらの観点からライフ・サイクルの8つの年代における発達課題、発達図式を提出した。この理論は、パーソナリティ発達理論に対し3つの主要な貢献をしている。
第1は、フロイトの心理-性的発達段階と平行させて、自我発達の心理社会的段階を識別したことである。これらの段階を通して、ひとは自分自身や社会の中で他者に対する新しい関係性を確立していく。
第2は、パーソナリティ発達を、フロイトのように幼児期段階で確立するとみなすのではなく、生涯の全段階を通じて続くものとみなしたことである。
第3は、各段階では新しい水準の社会的相互作用が必要となり、それによってパーソナリティ発達が生の方向へも負の方向へも変化しうると考えたことである。
エリクソンは、8つの心理-社会的発達段階を識別して、幼児期から老年期に渡る人の一生涯を描写した。それぞれの段階では、特定の葛藤が焦点となる。この葛藤は一度限りで解決されるものではないが、完全に解決しておかなければ後の段階で葛藤をうまく処理できないことになる。
▼ 2: エリクソンの発達理論
□ 1.信頼 対 不信(生後1年目)
受けた養育の質によって幼児は、環境を信頼し、それを秩序ある予測可能なものとみなすことを学習したり、逆に混沌とした予測不可能なものとして疑い、恐れ、不信感をいだくことを学習する。
重要な対人関係: 母および母性的人間
心理・性的段階: 口唇期
□ 2.自律性 対 恥・疑惑感(生後2~3年目)
運動能力・精神能力の発達や、探求や操作をする機会から、自律・適応・自己統制の感覚が出現。過度に批判したり、行動を制限すると、猜疑心や疑惑の感覚を生み出させることになる。
重要な対人関係: 長身的人間
心理・性的段階: 肛門期
□ 3.自発性 対 罪悪感(生後4~5年目)
子供の自発的な知的活動や運動活動に、両親がどのように対するかによって、自由や自発性の感覚が生じたり、逆に罪悪感や大人の世界へのバカげた侵入者といった感覚が生じる。
重要な対人関係: 核家族人間
心理・性的段階: エディプス期
□ 4.勤勉性 対 劣等感(生後6~11年目)
物事がどのように働き、操作されなければならないのかということに感心を持ち、規則、体制化、秩序化などの勤勉性が生まれる。しかし、結果がついてこないと劣等感が出てくることもある。
重要な対人関係: 近隣、学校内の人間
心理・性的段階: 潜伏期
□ 5.アイデンティティ 対 アイデンティティ拡散(青年期、12~18歳)
この時期、物事に対してさまざまな見方をするようになり、他者の観点から物事を見ることが出来るようになる。さらに、さまざまな役割を演じつつ他者と異なる一貫した、そして受容できる自分自身のアイデンティティという統合された感覚を発達させる。
「自分は何者か」、「自分の目指す道は何か」、「自分の人生の目的は何か」、「自分の存在意義は何か」など、自己を社会の中に位置づける問いに対し、肯定的かつ確信的に回答できることがアイデンティティの確立を示す重要な要素である。この逆がアイデンティティの拡散であり、これは自己が混乱し、自己の社会的地付けを身内なった状態を意味する。「負の同一性」―「スピード狂」とか「暴れ者」とかいった社会的に受容されない役割―を作り上げることになる。
重要な対人関係: 仲間グループ、リーダーシップモデル
心理・性的段階: 青年期
□ 6.親密感 対 孤独(青年期前期)
他者と接触しようとすることによって、親密感(他者に対する性的、情緒的、道徳的なコミットメント)が生じたり、親密な人間関係から孤独感が生じたりする。
重要な対人関係: 友情における相手意識、異性、競争・協力相手
心理・性的段階: 性器期
□ 7.世代性 対 停滞(成年期)
この段階では生活経験の関心が、自分自身から家族や社会、次世代へと広がっていく。このような将来への志向が発達しないと、自分の物的所有や身体的健康のことだけに関心を持つようになる。
重要な対人関係: 家族
心理・性的段階: 性器期
□ 8.統合性 対 絶望(老年期)
この生涯最後の段階で、今までの全てを振り返り、未知なる死を思う。それまでの各段階で行なった結果として、統合性をもって楽しむことが出来る。しかし、生涯が不満足で誤ったものであったことを見出す人が直面するのは絶望である。そのような人は、怒りをもって振り返るにも、希望を持って前を見るのにも遅すぎ、一生を切望のすすり泣きで終える。
重要な対人関係: 人類、私のようなもの
心理・性的段階: 性器期
これら8段階の危機をうまく乗り越える(「対」で結ばれた前者が後者を相対的に上まわる形で獲得される)ことが、健全な人格形成につながる。
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