臨床心理学特論 020 対象関係論 ウィニコット
■ 臨床心理学特論 020 対象関係論 ■
▼ 1: ウィニコット
精神分析の立場に立つイギリスの児童精神科医。
生涯に6万例を超える子どもとその家族に接したといわれ、「赤ちゃんというものはいない」という有名な言葉を残した。それに代表されるように、乳幼児とその主なる養育者との関係(対象関係)を重視し、乳児の内的世界とその養育的環境(母親の傾倒的な養育のあり方)とを橋渡しするための独自の考えを表現した。
ウィニコットは、自己の乳幼児期の母子関係の理論を、フロイトによるエディプス・コンプレックス(生後2年以上)、つまり父、母、子の三者関係の世界、クラインにおける抑うつポジション(生後6ヶ月から2年)、つまり母と子の二者関係の世界に対して、一者関係及び一者関係から二者関係への移行期の世界を解明するものとして位置づけている。
ウィニコットは抑うつポジションに関するクラインの研究を最重視し、それとともに一者関係から二者関係への移行については、フロイトのリビドー発達論やクラインの内的対象関係論の観点だけでは不十分であるとし、むしろ母子関係の基本を依存として捉えた。
□ 1.絶対的依存期 →相対的依存期 →独立へ
幼児は、はじめのうち、幼児が乳を欲しいと思った時、母親が直接的にそれを察知し、口元に乳房をもっていくなどして、乳児のニーズに100%適応する。
すると乳児は、乳房が自分の一部であるという錯覚、ないしは自分が創造したものという錯覚を持つ機会が与えられたことになる(絶対的依存期)。
次の段階の課題は、その錯覚から抜け出すこと(脱錯覚)である。これは乳児が許容できる範囲の母親の適応失敗を通して、つまり対象の破壊と再創造を通じて行なわれる。この過程では移行対象(母親からの分離時に幼児が持つ毛布やぬいぐるみなど、最初の「自分の一部ではない」所有物)が重要な役割を果たす。
こうした本能活動の行なわれる周辺に安全基地があって、そこで壊れ欠けた自己や対象像が再生・発展を繰り返し、確固とした姿かたちをとるようになる。従って、移行対象は対象の破壊に伴う対象喪失不安、つまり抑うつ不安に対する防衛としての役割を演じるとともに、自己実現の場所としても重要である。
□ 2.治療論
ウィニコットは、「偽りの自己が優勢なとき本当の自己と交流するためには、分析家はまず、患者の内在化された環境の重荷を肩代わりする状況をつくってやる。つまり、患者が深く依存的で未熟な幼児そのものになれる状況をつくってやることが必要である。そしてはじめて分析家は本当の自己を分析できるのである」と述べている。
そのため早期の幼児のごとく、依存への退行を促進するような治療場面を設定しなければならない。
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