カテゴリー「第01回 心理学史」の6件の記事

心理学史 006 認知科学

■ 心理学史 006 認知科学 ■

認知科学とは、知を解明しようとする科学。

学際的に(いくつかの学問領域にまたがり)人間の認知活動の豊かさや複雑さを明らかにし、人間の認知のメカニズムとその情報処理過程を解明しようとする。いずれの研究も人間の認知システムの一部を計算機モデルで明らかにすると同時に、人間の最も人間らしいものとは何かを明らかにしている。

認知科学が発展した背景には、情報理論とコンピューターが1940年代以降大きく発展したことがあげられる。

 ・チョムスキーの生成文法理論
 ・ミラーのマジックナンバー7±2

※認知心理学
認知心理学とは、知覚、記憶、学習、思考などを研究対象とする心理学の一分野。近年目覚ましい発展を遂げている。

【私的に・・・】
認知科学や認知心理学は、いわゆるカウンセリングをイメージする「心理学」とは懸け離れた位置にいる。心理学の最先端であることには間違いないが、一方でいわゆる「臨床(現場の)心理学」ではない。

【キーワード】
●認知革命
●並列分散処理モデル(POPモデル)
●(1990年代以降)脳神経科学
●PETやMRI
●1957年ダートマス会議→認知革命→認知科学
●認知メカニズムと情報処理過程の解明
●計算機モデルシミュレーション

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心理学史 005 精神分析理論の発展

■ 心理学史 005 精神分析理論の発展 ■

精神分析(Psychoanalysis)とは、狭義にはフロイトが創始した心理療法の理論をさすが、そこから多数の心理療法理論が枝分かれし、その幅広い人間学的な視点によって20世紀の人間科学全体に大きな影響力をもった、いわゆる思想でもある。

▼ 1.アドラーの個人心理学
フロイトの「夢判断」を読んで精神分析に魅かれ、フロイトのもとに集まった一人。国際精神分析学会の創設に力をつくし、初期の精神分析運動の中心的メンバーの一人となった。しかし、フロイトの性欲説に不満を抱くようになり、人を行動にかりたてる動機はリビドーではなく、他者への優越の欲求(権力への意志)であると想定。この優越の欲求が主体の劣等感を補償しようとして生じ、その過補償ないしは補償不足が神経症をもたらすとした。

 ※フロイトと仲たがい
 ・人格の全体性
 ・劣等感

▼ 2.ユングの分析心理学
1907年のウィーン精神分析協会に参加しフロイトと出会い、国際精神分析学会の創設にアドラーとともに貢献してその初代会長となった人。フロイトがリビドーを「性的」なものとみなしたのに対し、ユングはもっと一般的な「心的エネルギー」とみなした。さらに無意識に対しても、フロイトのように快感原則に支配された「反理性的」なものとは考えず、むしろ意識を補償する積極的、肯定的な機能をもったものとみなす一方で、個人的無意識とならんで人類に普遍的な集合的無意識を仮定した。

 ※フロイトと仲たがい
 ・集合的無意識
 ・元型
 ・タイプ論

▼ 3.自我心理学
フロイトの娘、アンナ・フロイトによって創始された精神分析の一学派。一般心理学における自我心理学と区別するために、特に精神分析的自我心理学と呼ばれることもある。フロイトの自我・超自我・イドという構造論のうち、自我の機能を重視し、研究を発展させた。

※アンナ・フロイトは、最初は教育者として子供にかかわる仕事にたずさわっていたが、父親であるフロイトの影響をうけて、精神分析に児童分析という新分野を開拓する。その一方でフロイトとともに精神分析の理論の発展に大きく貢献した。クライントとは犬猿の仲。

 ・自我の適応的機能
 ・アイデンティティ理論

▼ 4.新フロイト派
フロイトの欲動論を批判し、文化的・社会的要因を重視した学派。フロイト左派とも呼ばれる。ホーナイ,K、フロム,E、サリヴァン,H.Sが有名。

 ・社会構造
 ・対人関係

▼ 5.対象関係論
精神分析的精神医学の一方法論。フロイトの理論を基にメラニー・クラインらが児童や精神病性疾患の精神分析に取り組む中で新しいやり方として発展させ、さらにそれをフェアベーン、ウィニコット、H.ガントリップらが推し進めた。

 ※クラインはアンナ・フロイトと犬猿の仲
 ・エディプス期以前の内的対象関係

▼ 6.その他:実存主義心理療法
フランクルは、第2次世界大戦中ユダヤ人であるという理由でアウシュビッツの強制収容所に送られ、家族や多くの知人をガス室で失った不遇な人(→人間は苦悩する存在)。
1950年頃、精神療法の一つとして実存分析(ロゴテラピー)を提唱。人間は身体的、心理的、精神的な3つの次元の統一体であり、フロイトの「快楽の意志」やアドラーの「権力への意志」だけでなく「意味への意志」をもつ精神的実存であると仮定した。だからこそ、人は心理的、身体的な欲求不満に陥るばかりでなく、みずからの生に意味や価値を見いだせない時に実存的欲求不満や実存的空虚感に陥り、それが解決されないときには精神因性神経症になると考えた。

 ・実存分析
 ・意味への意志
 ・実存的空虚
 ・実存的欲求不満
 ・精神因性神経症

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心理学史 004 新行動主義

■ 心理学史 004 新行動主義 ■

ワトソンの行動主義心理学 →新行動主義へと発展
刺激(S)と反応(R)の間に行動的な変数として媒介変数(O)を仮定し、ハル、トールマン、スキナーなどが代表格。

※新行動主義を厳格なワトソニズムに反対する広義の行動主義ととらえ、1930年代以降の行動主義をすべて新行動主義と理解する立場もある。

ワトソンとの共通点
 ・直接観察可能な行動を対象とする
 ・刺激と反応関係によって記述する(S-R説)

新行動主義の特徴
 ・行動をバラバラな分子行動ではなく全体として1つのまとまりをもった総体的行動とする
 ・刺激と反応の間に仲介変数を仮定する(S-O-R)

新行動主義を積極的に推し進めたのはトールマンである。トールマンは、個体は盲目的に行動するのではなく、特定の目標に向かって進み、内在する目標や状況の認知をその媒介過程(S-O-Rの「O」)の内容として考える必要があるとした。ちなみに、今日では、行動主義、新行動主義という言い方よりも行動理論という用語が包括的に用いられている。

※仲介変数とは
心理学的な現象を予測・説明するために、推測される「よくわかっていないカラクリ」。

▼ 1.ハル,C.L
行動の予測と説明のために仮設構成体を認める立場。強化説、S-O-R心理学が有名。

▼ 2.トールマン
ドイツ留学時にゲシュタルト心理学に触れ、影響を受ける。
トールマンによれば、人間は環境を認知し、行動している。それゆえ人間の行動を理解するためには、環境をどのようにとらえているか(認知しているか)、を知らなければならない。この認知の過程を仲介変数とみなし、それを重視するのがトールマンの特徴である。
 ・目的的行動主義
 ・認知理論的行動主義

▼ 3.スキナー
アメリカの心理学者。大学院生の頃、ネズミがバーをおせば餌がでる「スキナー箱」を考案し、動物の自発的な行動(=オペラント行動)は、随伴性強化(=その行動を行えば餌を与えられること)によってその生起確率が増すというオペラント条件付けの基本原理を確立した人。新行動主義を批判し、徹底的行動主義の立場をとった。
 ・レスポンデント条件付け
 ・オペラント条件付け
 ・実験的行動分析
 ・三項強化随伴性
 ・シェイピングの原理
 ・徹底的行動主義

【私的に…】
行動理論は流行り。
ワトソンと行動主義はワトソニズム(古典的行動主義)と呼ばれ、現在の新行動主義と区別されている。ワトソニズムは、その素朴な機械論的立場のために激しい非難をあびてきたが、行動の客観的研究の道を切り開いてきたことは、現代行動科学の一つの源泉として位置付けられる。
※ワトソンの行動主義 → 新行動主義

【キーワード】
●ハル
●トールマン
●スキナー
●行動はバラバラではなく、1つのまとまりを持った総体的行動
●仲介変数

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心理学史 003 行動主義ワトソン(とジェームズ)

■ 心理学史 003 行動主義ワトソン(とジェームズ) ■

▼ 1.ワトソン(inドイツ)
アメリカの心理学者。「動物の訓練」という論文で学位を獲得。ヴントの意識心理学を批判する行動主義を提唱したが、妻との離婚がからんで学会を去り、実業界に転じた。

ワトソンは、心理学が「客観的な行動を対象とすべきである」と主張。ワトソンの行動主義では、心理学の目的は「行動の予測と制御」であるとし、心理学は客観的、実験的な心理科学の一領域であるから、行動だけに焦点を当て、意識や内観は排除されなければならないとする。

ワトソンは、「全て目に見える行動でなければならない」とし、客観的行動(overt behavior)を重視した。

※意識心理学とは
意識を対象とする心理学。心理学はすべて意識に関わるともいえるが、特に意識をその構成要素を明らかにすることにより説明しようとする心理学を指す。

※ワトソンの名言
「私に、健康で、いい体をした1ダースの赤ん坊と、彼らを育てるための私自身の特殊な世界を与えたまえ。そうすれば、私はでたらめのそのうちの1人をとり、その子を訓練して、私が選んだある専門家-医者、法律家、芸術家、大実業家、そうだ乞食、泥棒さえも-に、その子の祖先の才能、嗜好、傾向、能力、職業がどうだろうと、きっとしてみせよう」(安田一郎訳「行動主義心理学」)

▼ 2.ジェームズ(inアメリカ)
アメリカの哲学者であり、心理学者。プラグマティズムを思想的に大きく発展。

ヴントに対してジェームズは学問のフロンティアを目指し、新しい研究傾向にオープンな態度をとった。

ヴントの心理学が、ドイツだけではなく、全世界のアカデミックな心理学に影響を残したのに対し、ジェームズの心理学はパーソナリティ理論に見られる人間理解に多くの教訓を与えたといえる。

ちなみにジェームズは、ヴントについて「単なる教育というものが、一人の人間に、何を与えることができるかという、完全な見本」と評し、フェヒナーの精神物理学については「まったく、何にもならない」と述べている。

【私的に…】
ワトソンにみられる行動主義(→後の行動心理学)は、人間の行動理論を生理学や生物学へと還元していくことであり、もはや人間を全体としてとらえようとする心理学から離れた領域にある。とはいうものの、人間行動の客観的な分析は、従来の心理学では見通せなかった視野を持っていることも否定できないのも事実。

【キーワード】
●行動主義の提唱者ワトソン
●心理学の目的は行動の予測と制御
●客観的行動(overt behavior)

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心理学史 002 ヴント(構成主義心理学)

■ 心理学史 002 ヴント(構成主義心理学) ■

ヴントは、実験心理学を築いたドイツの心理学者であり哲学者。始めは医学を修めだが、実験心理学を学んだことをきっかけに、生理学的心理学に興味が移った。

ハイデンベルク大学教授、チューリッヒ大学教授を経て、ライプツィッヒ大学教授。

1879年に世界ではじめての「心理学実験室」開設したことで有名。科学的心理学はこのときにはじまったとされる。彼の許で学んだ各国の研究者は、自国に同様の研究室をもたらし、世界中に心理学研究を広めていった。

ヴントによれば心理学は直接経験の学問であり、直接経験は意識の事実であるから、心理学の目的は、複雑な意識過程を分析してその要素を抽出し、その要素間の結合を支配する法則を明らかにすることにあるとする。内観の分析によって心的要素を抽出し、その結合としての心的複合体を考えて「創造的総合の原理」を提唱した。

ヴントの心理学が要素主義的な構成心理学、意識心理学といわれる所以である。

 1.心理学=直接経験
 2.直接経験=意識の事実
 3.意識過程を分析
  →要素を抽出
  →要素と要素の(連合)法則を解明

※この連合法則として「創造的統合の原理」を提唱。創造的結合とは、個々の要素が集まってできたものが、個々の要素を越えた性質をもつという考え。

ヴントは内観法を用い、要素を構成することにより心を説明しようとする構成主義的立場をとった。従って内観法では観察できない無意識を扱ってはいない。

その後、
 ・意識内容について、フロイトから「無意識に着目すべきである」
 ・内観について、ワトソンから「客観的ではない」
 ・構成主義について、ゲシュタルト心理学から「こころは全体的である」
という批判があがった。
 
※心理学の流れ
A.ヴントの構成主義心理学(操作的定義)
  a.ゲシュタルト心理学 →認知心理学
  b.行動主義心理学 →新行動主義
  c.精神分析学 →人間性心理学
B.機能主義心理学(ジェームズ.W)(目的的行動)

※実験心理学とは
狭義には、実験室において実験的方法をもちい、感覚、知覚、記憶、学習、思考などを解明する立場のこと。

【私的に…】
ちなみに、ヴントは典型的なドイツ帝国の大学教授らしく、あくまでアカデミズムの窓を通してしか人間を見ず、自分の立場をあくまで守り、それに反する説を受けつけなかった。そのために、ヴントの心理学からは人間的な色とりどりとなまなましさが失われている。

ヴィルヘルム・ヴント(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%83%B3%E3%83%88


【キーワード】
●ヴント
●ライプツィッヒ大学
●心理学実験室
●内観法
●要素主義・構成主義
●心を要素に分解
●人間の意識内容=意識=部分・要素
●連合法則

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心理学史 001 イギリス哲学

■ 心理学史 001 イギリス哲学 ■

心理学の歴史は、19世紀「イギリス哲学」を起源とする。

イギリス哲学では、ある事柄を思い浮かべた時、その事柄に対して生じる連想を「連合法則」により明らかにしようとした。連合法則とは、感覚や観念の連合の法則のことであり、当時は内省(哲学的思弁)によって研究された。

※内省とは
自分自身の「意識」過程を心理学の直接的な「データ」と見なし、それを観察すること。

この考え方は、次のヴントの時代まで引き継がれる。

また、当時の批判として、
 ・私的な経験に過ぎない
 ・哲学者だけの法則である
 ・普遍的ではない
というものが多くみられた。

※連合とは
感覚印象や概念などの心の活動が、個人の経験により互いに結びつくこと、および結びついたものの一方が生じると他方が引き出されること。

※連合主義とは
イギリス経験論主義者(ホッブズから、ロック、バークリー、ヒューム)が、複雑な概念や高級な心的過程は、最も単純な心的要素(感覚、単純観念、印象など)が連合することによって成立すると考えたこと。連合主義が、要素論的ないし原子論的といわれるのはこのため。

【私的に…】
イギリス哲学は、おいしい料理(=複雑な概念や高級な心的過程)が、なぜおいしいのかを一生懸命考えるようなもの。材料(=単純な心的要素)か、火の加減や時間(=感覚)か、料理人(=印象)か。結局、どうすればいいのかわからないところが、美味たる所以(むろん、それゆえ学問として成立する)。

【キーワード】
●連想
●連合法則
●哲学的思弁

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