カテゴリー「第03回 臨床心理学各論」の29件の記事

臨床心理学各論 029 摂食障害

■ 摂食障害 ■

▼ 1.摂食障害とは
DSM-Ⅲにおいて、不食(anorexia)、過食(bulimia)、異食(pica)の3つに分類されている。臨床的に異食はマレ。

拒食・やせが中心である神経性食欲不振症(神経性無食欲症)と過食・嘔吐が中心である神経性過食症(神経性大食症)とに大別される。過食症は拒食症からはじまり、移行していくことが多い。

※異食症とは
食べ物として適当でない物を口に入れる行為。幼児に多く見られる。心理的要因としては、ストレスによる心因反応やそれが習慣化した神経性習癖。
 
▼ 2.特徴
拒食症は、一般的にダイエットをきっかけとして食物をとらなくなり、期待される体重の極度に痩せていく(期待される体重の85%以下の体重が続くような体重減少)。体重の減少に伴い、月経の停止・血圧の低下など多くの身体症状が出現する。

本人に痩せているという自覚がないことと、極度な痩せにも関わらず過活動を示すことが特徴的である。過食の後、後悔の念にかられ、下痢の服用や嘔吐をするものも多い。

▼ 3.原因
母子のいずれか、あるいは双方の問題から生じた母親から子供への母性(あるいは女性性)の受け渡しの失敗。患者の9割以上は女性。前景として、母親からの愛情不足や親との葛藤からくる成熟拒否。

□ 1.家族の特徴
本人は、従順・内気、完璧主義・脅迫的、気は小さいが負けず嫌い、ずっとよい子といった特徴を持つ。

母親は、過保護・過干渉、しっかり者で世話焼きタイプ、自分の気持ちを子供に押しつけがち(母と子の境界が消失)といった特徴を持つ。

父親は、非常に仕事熱心でまじめなタイプ、家にいる時間も少なく家族との関わりも希薄といった特徴もある。しかし逆に、活動的で家族に対して支配的である人も。

他に、痩せを美徳とする文化的要因も考えられる。

▼ 4.治療
内科的なものから精神的なものまで広がりがあるので、入院治療が望ましい。拒食症の場合、点滴による栄養補充は不可欠。ある程度体重が戻ってくると病識(自分が病気であることに気がつく)が出てくる。

心理療法では、病初期にさかのぼってこころの奥底に入り込んでいく方法には非協力的な場合が多いので、患者との信頼関係の確立を優先し、その上で認知行動療法や指示療法を行っていく。

一般的に背景には家族の問題があるため、患者の家族も呼び、家族療法も行われる。薬物療法では、食欲増進剤、抗うつ剤、抗精神病薬などが用いられる。

【キーワード】
●神経症無食欲症
●神経症大食症
●母性の受け渡し失敗
●入院治療
●病識の回復

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臨床心理学各論 028 カーンバーグの人格構造論

■ カーンバーグの人格構造論 ■

カーンバーグの人格構造論は、

 ・自我同一性統合の程度
 ・常用される防衛規制
 ・現実検討能力の差

によって病体水準を3つに分けて捉える。

病態水準とは、精神分析理論に基づいて精神病理を理解しようとする考え方。これは症状に基づき疾患として診断する立場とは全く異なる。

※症状を問題の程度で並べると以下の順になる。
 ・神経症人格構造(軽度)
 ・境界人格構造(中度)
 ・精神病人格構造(重度)

▼ 1.神経症人格構造
自己表現と対象表象が区別され、かつ矛盾した側面をも統合したもの。

抑圧、反動形成、隔離、打ち消し、合理化、知性化などの高度の防衛によって内的葛藤を防衛しており、その葛藤の解釈によって心的機能は改善が期待される。

自己と非自己、内界由来と外界由来のものを区別でき、自己と他者を現実的に評価できる。

▼ 2.境界人格構造
自己表象と対象表象は区別されているが、再構成され矛盾する側面が分裂。

良い対象と悪い対象が2極化されてしまう。分裂(splitting)を中心として理想化、投影同一化、否認、万能感、価値引き下げなどの原始的防衛が用いられているが、その解釈によって心的機能は改善が期待される。

現実との関係および感情は動揺する。

▼ 3.精神病人格構造
自己表象および対象表象の境界は失われがちで、妄想的な同一性が行われている。

防衛規制は原始的で解体と自己-対象融合から防衛している、

精神分析的解釈は退行を生じさせるため禁忌。現実検討能力は失われている。

【キーワード】
●神経症人格構造
●境界人格構造
●精神病人格障害

▼ 4.追加
境界性人格構造の特徴

得意な構造的特徴としては次の3つ。

▼ 1.自我の統合の障害
対象表象が分裂しており、同時にそれゆえ自己表象も分裂している
※対象表象は、対象に対するイメージのようなもの。対象に対するイメージが分裂しているため、それに従い自己表象(イメージ)も分裂している。

▼ 2.得意な防衛機制
分裂、投影制同一視、原始的理想化、脱価値化、否認など

1.投影性同一視
悪い攻撃的な自己と、対象から生まれる破壊性から、よい自己対象関係を守るための機制であって、本来は自
分の内部にある攻撃性が、あたかも他者からやってくるかのごとくに体験する構造をとる。

2.原始的理想化
外界の対象の悪い部分をみないようにして、対象とのよい関係を維持しようとの機制である。過剰におだて上
げ、過剰にへりくだり、相手を過剰に高く評価する。そして自身はそれにひれ伏し、帰依しようとする。

3.脱価値化
相手の価値を貶め、過剰に低く評価することである。

4.否認
それを認めてしまうと不安を引き起こすようなことを認めないでおく規制である。抑圧との違いは、抑圧が内的欲動や現実、願望などを意識から排除する働きであるのに比べて、否認は一方で外的現実を知覚していながら、他方でその知覚を否定するところにある。

▼ 3.現実検討力の維持

▼ 4.自我の脆弱制
不安耐性の欠如、衝動コントロールの欠如、発達した昇華経路の欠如。

▼ 5.超自我の統合不全
超自我と理想自我が統合されることなく別々に存在するため、超自我は非常に厳しく、サディスティックな性質を帯びる。そこで未熟なままの理想自我は、現実的な理想を生み、自我が現実的な目標をつくれない。よって現実的な対象関係ができにくく、対象の正しい評価、対象からの学習もできない。超自我が人格発達の有効な力を発揮できないのである。

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臨床心理学各論 027 人格障害・DSMによる分類

■ 人格障害・DSM-Ⅳによる分類 ■

DSM-Ⅳでは、人格障害に3種の大カテゴリーとその下に10の人格障害を認めている。

■ 1: A群人格障害(3種類) ■
奇妙で風変わりな群、対人関係からの引きこもり・奇妙な話と態度が特徴。

▼ 1.妄想性人格障害
他人の動機を悪意あるものと解釈するといった広範な不信と疑い深さが、成人期に始まり、様々の状況で明らかになる。

 ・他人に対する不信感
 ・他人に対する疑い深さ
 ・自己評価に過敏

▼ 2.分裂病質人格障害
社会的関係の遊離、対人関係状況での感情表現の範囲の限定など広範囲に現れる。

 ・人と関わることを好まない
 ・自分の評価を気にしない
 ・対人場面で喜怒哀楽が乏しく冷たい

▼ 3.分裂病型人格障害
親密な関係で急に気楽でなくなることと、そうした関係を持つ能力の減少。認知的または知覚的歪曲と行動の奇妙さの目立った社会的および対人関係的な欠如の広範な様式。

具体的には変な信念、異質な知覚体験、奇妙な話し方と考え方、疑い深さ、親しい友人がいない、などの特徴が指摘されている。以前は精神病質、異常人格などと呼ばれていた障害。

 ・奇妙な空想や迷信深さ
 ・親しい関係を続けることが困難
 ・対人場面で過剰な不安

【キーワード】
●妄想性人格障害
●分裂病質人格障害
●分裂病型人格障害
 
 
■ 2: B群人格障害(4種類) ■
劇的で感情的、移り気を特長とする。

▼ 1.反社会性人格障害
集団や社会の秩序を無視し侵害する。犯罪者に多い。非社会的行動に比べ、積極的・攻撃的な行動として出現し、行動が人物などの対象に向かう。

 ・違法行為を繰り返す
 ・人をだます
 ・衝動性があり計画性がない
 ・怒りっぽく喧嘩っ早い

▼ 2.境界性人格障害
従来の境界例を受け継ぐ形で定められた人格障害の概念。激しい怒りや抑うつ(慢性的な空虚感)、焦燥などの著しい気分の変動が前景にあるのが特徴。対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性を備える。周囲の人間の感情を強く巻き込む。

 ・理想化とこき下ろしの両極端な対人関係
 ・不安定な自己像と空虚感
 ・不安定な感情・気分
 ・過剰な身捨てられ不安

▼ 3.演技性人格障害
過度な情緒と人の注意を引こうとする。

 ・常に注目の的になっていようとする
 ・芝居がかった態度
 ・感情は浅薄で移ろいやすい

▼ 4.自己愛性人格障害
誇大性、賞賛されたいという欲求、共感の欠如。

 ・自分が特別
 ・対人関係で相手を不当に利用
 ・尊大で傲慢な態度

【キーワード】
●反社会性人格障害
●境界性人格障害
●演技性人格障害
●自己愛性人格障害
 
 
■ 3: C群人格障害(3種類) ■

不安で心配の強さを特長とする。

▼ 1.回避性人格障害
人から悪く評価されること、批判されることに対するおびえや傷つきやすさなど、対人関係上全般的な不安をもつ。そのため人間関係や社会的、職業的活動を避けるなどの回避行動がみられる。

しかし、内面では人と関わりたいという気持ちがある点が、分裂病型人格障害と異なる。社会的生死、不適切感、および否定的評価に対する過敏性を備える。

 ・社会的制止、不適切感、否定的評価に対して過敏
 ・引っ込み思案

▼ 2.依存性人格障害
世話をされたいという広範で過剰な欲求があり、そのため従属的でしがみつく行動をとり、分離に対する不安を感じる。女性より男性に多いとされる。

 ・分離不安が強い
 ・拒まれることを恐れ不快なことを進んでする

▼ 3.強迫性人格障害
秩序、完全主義、精神面および対人関係で統制にとらわれ、柔軟性、開放性、効率性が犠牲にされる。

 ・秩序、完全主義にとらわれ効率を犠牲にする
 ・娯楽や対人関係を犠牲にして仕事する
 ・道徳、倫理に過度に誠実で融通が利かない
 ・頑固

【キーワード】
●回避性人格障害
●依存性人格障害
●強迫性人格障害

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臨床心理学各論 026 人格障害

■ 人格障害 ■

人格障害(personality disorders)のDSM-Ⅳによる定義は、以下の通り。

 ・その人の属する文化から期待されるものから著しく偏った内的体験および行動の持続的様式で
 ・その様式は以下の2つ以上のよう領域に表れる
 ・認知(自己、他者、出来事を知覚し解釈する力)
 ・感情性(情動反応の範囲、強さ、不安定、および適切さ)
 ・対人関係機能
 ・衝動制御

 ・その持続的様式に柔軟性がなく、広範囲にみられる
 ・その持続的様式により、臨床的な著しい苦痛
 ・または社会的・職業的な機能の障害を引き起こす

 ・その様式が小児期早期または青年期から長期間続いている
 ・その様式は、精神疾患の症状でも後遺症でもない
 ・その様式は、薬物や一般的身体疾患によらない

つまり、思考・判断・行動が普通の人間に比べ特徴的でズレており、そのことで周りや本人が悩んでいる状態。加えて、現在の知識では疾患とはいうことができず、人格面の障害であるとしか判断できない状態をいう。

【キーワード】
●人格障害
●内的体験・行動の持続様式
●広範囲
●社会的・職業的な機能障害
●疾患とはいえない

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臨床心理学各論 025 気分障害・成因と治療

■ 気分障害の成因 ■

複数の要因の関与を考えなければならない。ここでは生物学的要因、心理学的要因、社会的要因の3つについて説明する。

▼ 1.生物学的要因
家族研究や双生児研究から、何らかの遺伝的要素が関与していると考えられる。

生化学的仮説、セロトニン仮説など。

▼ 2.心理的要因(性格特徴)

□ 1.躁うつ病・循環気質(クレッチマー)
循環気質あるいは同調性性格ともいう。人付き合いがよく、気がいい、親切で親しみやすいことを性格基調とする。

朗らかでユーモアに富み、元気で激しやすいという軽躁傾向と、静かで、落ち着き、ものごとを苦にしやすく、感じやすいという軽うつ傾向を備える。

□ 2.うつ病・執着気質(下田)
一度生じた感情が長く持続し増強する点を基本的特徴とする。

強い義務責任感、仕事熱心、徹底的、熱中的、几帳面、凝り性、正直などがみられる。

□ 3.うつ病・メランコリー親和型性格(テレンバッハ)
几帳面、対他配慮を本質的特長とする。

秩序を愛し、秩序と一体感をもつことを生活の基本原理とし、仕事面の堅実さのみならず私的な対人生活においても他人への配慮を怠らない。義理を重んじ、人と争わず、人の思惑を気にし、人に頼まれると断れない弱気な一面をもつ。

生活の秩序が脅かされると、メランコリー親和型の本質的特徴に含まれる自己矛盾が急激に進行し、前うつ状態からうつ状態へと追い込まれる。

□ 4.誘因(状況因)
発病に先だって特徴的な出来事がみられることもマレではない。

誘因としては、転勤(転任、転職、昇任、就職を含む)、子女の結婚・婚約・留学、家族成因の移動(死亡、別居、誕生同居人の増減など)、生命に関わらぬ程度の身体疾患(負傷)、負担の急激な増加・軽減、出産(ホルモンバランスの変化)、居住地の移動・改変、愛着する事物ないしは地位・財産の損失などがある。

▼ 3.社会的要因
地方から都市への人口集中、核家族化、個室中心の生活、寄るべき権威像の消失。執着気質やメランコリー親和型性格の人間の破綻か。

【キーワード】
●遺伝的要素
●クレッチマーの循環気質
●同調性性格
●下田の執着気質
●持続増強する感情
●テレンバッハのメランコリー親和型性格
●秩序
●誘因


■ 治療 ■

原則として外来で行われるが、自殺の危険のある時などは入院がよい。治療は、薬物療法と精神療法が主である。 

【キーワード】
●外来
●薬物療法
●精神療法

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臨床心理学各論 024 気分障害・躁状態

■ 気分障害・躁状態 ■

躁病の基本症状は

 ・生命感情の高揚
 ・生命力の高ぶり

の2つ。重症の躁状態では、周囲に迷惑をかけたり、治療に拒絶的なため入院する場合が多い。

※ハイテンションでうっとうしい状態。

▼ 1.症状
爽快な気分、抑制が外れる、自信過剰、観念奔逸、疲れを感じない、怒りっぽくなる、注意散漫、睡眠時間の減少、性欲亢進などの症状がみられる。

▼ 2.病型
気分障害は双極性障害とうつ病性障害(単極生うつ病)の2つに分けられる。双極性うつ病は躁とうつの2つの病相をもつものをいい、うつ病性障害はうつ病相だけを示すものをいう。

【キーワード】
●生命感情の高揚
●生命力の高まり
●単極生うつ病
●双極性うつ病

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臨床心理学各論 023 気分障害・うつ状態

■ 気分障害・うつ状態 ■

うつ病の基本症状は

 ・生命的悲哀
 ・生命的制止

であり、その他、離人、不安、絶望などの精神症状と、自律神経・内分泌障害を中心とする身体症状によって病像が彩られる。

▼ 1.精神状態
はっきりした原因なしに気分が憂鬱になる抑うつ気分(depressive mood swing)が感情障害の基調をなす。

その他、おっくう・面倒くさいと感じる抑制(inhibition)、不安・焦燥(anxiety and agitation)、自信の喪失(lose of selfesteem)、自責感・罪責感(self-reproach)などがある。

妄想(delusion)は微小妄想が主で、罪責妄想(delusion of guilt)、貧困妄想(delusion of poverty)、心気妄想(hypochondriacal delusion)の3つがが認められる。ただし、一過性で被害妄想が現れるときもある。

抑うつ気分などの症状が、朝の覚醒時は悪く、午後から夕方に向けて改善する日内変動が認められる。うつ病の抑うつは、神経症の抑うつに比べ日内変動や生命的悲哀感が認められ、何らかの誘因(主に喪失体験)を欠くことが特徴である。

▼ 2.身体症状
睡眠障害はほとんど必発する重要な症状。睡眠障害(sleep disturbance)は、過眠(hypersomnia)、不眠(insomnia)に大別される。

不眠はさらに寝付きにくい入眠障害、すぐに目が醒めてしまう熟眠障害、3時・4時に目が覚めてしまう早朝覚醒の3つに分けられる。

その他、食欲不振(loss of appetite)、性欲低下(loss of sexual desire)、体重減少、その他(いわゆる自律神経失調症的症状)が認められる。

※季節性うつ病
冬季のみ抑うつ症状、過眠が起こる。春になると元気になり夏期は軽繰うつ状態(光を制限するとよくなる)。光源療法が効果的、緯度の高いところに住む人に多く、緯度の低いところに行くと治る。

※仮面うつ病
精神症状を訴えず、身体症状を全面に出して訴える。注意深く聞くとうつ病だと判明する。

【キーワード】
●抑うつ気分が感情障害の基調
●抑制
●妄想
●睡眠障害

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臨床心理学各論 022 気分障害

■ 気分障害 ■

気分の高揚ないしは抑うつといった気分変化を優勢な症状とする精神障害。

▼ 1.定義
原因的には内因性の精神障害で、「感情(ないしは気分)の動揺」を中心とする一定の症状を呈し、その経過は相性、周期性があり、後に何らかの精神的欠陥を残さない。

・内因性の精神障害
・感情の動揺
・相性・周期性
・精神的欠陥はない

精神病レベルのものから軽い非精神病レベルのものまである。

【キーワード】
●気分の高揚と抑うつ
●内因性
●感情の動揺
●相性、周期性
●精神的欠陥を残さない

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臨床心理学各論 021 統合失調症・類型

■ 精神分裂病の類型 ■

精神分裂病は以下の5つの類型に区分される。

 ・解体型(破爪型)
 ・妄想型
 ・緊張型
 ・単純型
 ・残遺型

▼ 1.解体型(破爪型)
「破爪」とは思春期の意味。必ずしも思春期発症とは限らず、20歳前後から20代中頃までの発症が多い(妄想型は20代後半から30代にかけてと遅い)。

幻覚や妄想は顕著ではなく、あったとしても始終断片的で妄想型のように体系化することはできない。

中心症状は無関心、無為、思考障害、社会生活の不能、奇妙な行動などの陰性症状。社会生活の脱落、感情障害、自閉性は他の型に比べて特別顕著。発症は目立たぬ仕方でゆっくり始まり、慢性的に経過し、途中にみるべく好転なく進むタイプと、途中で残遺型に移行するタイプがある。一般的に予後は不良。

▼ 2.妄想型
妄想主導型で多くは幻覚を伴う。社会性からの脱落・感情障害・自閉性はあまり顕著でない。一見したところ、それほど重い精神病だとわからないことがある。

妄想型の発病は他の型の分裂病と比較して遅く、20代後半から30代、時には40歳前後のこともある。経過としては、人格の崩壊へ至ることも多いが最後までそれほど崩れない場合も多い。妄想型の患者は、寛解期での生活機能が他の型の患者よりも良好である。

▼ 3.緊張型
顕著な精神運動性障害を特徴とする型。緊張病性症候群を呈し、客観症状が派手でよくわかる。幻覚・妄想・作為体験などの体験に圧倒され外界の刺激に対し、適切に反応することが出来ない状態である。

急性に発病することが多く、一端良くなっても繰り返し、やがて人格の崩壊に至ることが多い。発病は破爪型と同様に20歳前後に多いが、今日はそれほど多くない。

▼ 4.単純型
本質的には破瓜型と同じく精神症状が極めて少ない。緩徐な経過を取っていつとなく非現実的で孤独な生活に移行していく類型。

人格障害の精神分裂病質人格障害と区別が付きにくく、独立の病型として単純型を置くかどうかは諸説に分かれる。

▼ 5.残遺型
過去に少なくとも一つ以上の統合失調症のエピソードをもつ型。現在精神病の症状はなく、社会生活の大部分は可能であるが軽度ながら統合失調症の残滓がある。

感情の平板さ、社会的引きこもり、連想のゆるみ、非論理的考え方、いささか常軌を逸した行動など。経過としては、この状態で長年続くタイプと、時々短いエピソードを再現するタイプがある。晩年寛解も。

【キーワード】
●解体型(破瓜型)
●妄想型
●緊張型
●単純型
●残遺型

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臨床心理学各論 020 統合失調症・陰性症状

■ 陽性症状と陰性症状 ■

▼ 2.陰性症状
正常の心理現象にあるはずのものが欠落している症状。

□ 1.情動の平板化・情動純麻
表情変化の欠如、自発的働きの減少、身振りによる表情の減少、視線による表情の減少、情動反応性欠如、場にそぐわない情動、声の抑揚の欠如など。

□ 2.思考の貧困
会話量の貧困、会話内容の貧困、途絶え、返答潜時の延長など。

□ 3.意欲・発動性の欠如
身だしなみと清潔度(だらしなさ)、職業・学校持続性の欠如、身体的不活発など。

□ 4.快感喪失・非社交性
娯楽への関心や余暇活動の低下、性的関心の低下、親密さや親近感を感じる能力の低下(孤立化)など。

□ 5.注意の障害
ぼーっとして、心ここにあらずという状態。

【キーワード】
●陰性症状

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臨床心理学各論 019 統合失調症・陽性症状

■ 陽性症状と陰性症状 ■

陽性症状は通常「みられないもの」が存在し、陰性症状は通常「あるはずのもの」が存在しない状態。

▼ 1.陽性症状
正常な心理状態ではみられない異常な心理現象である症状をさす。

□ 1.幻覚・妄想

□ 2.奇異な行動
奇妙な格好、独語、唐突で奇妙な行動、攻撃的・焦燥的行動、反復的・常同的行動(無意味な動作の繰り返し)などがみられる。

□ 3.(陽性の)思考形式の障害
話題の脱線、的外れの応答、支離滅裂など。

□ 4.場にそぐわない感情

【キーワード】
●陽性症状

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臨床心理学各論 018 統合失調症・主観症状

■ 客観症状と主観症状 ■

▼ 1.主観症状
患者の体験している症状で、本人に聞かないと第三者からはわからない。主なものは以下の通り。

 ・妄想
 ・幻覚
 ・作為思考・影響体験
 
 
□ 1.妄想
妄想とは、絶対的な確信で、なんと訂正されようと訂正不能であり、その内容は多少なりとも現実離れしている誰とも共有されない一人だけの信念。

2人で妄想を共有する共有妄想の場合もマレにある。妄想は一次妄想と二次妄想にわけられる。

▽ 1.一次妄想
心理的な理由なしに不合理な思考が起り、直感的な確信で発生的に了解不能なもの。

以下の3つに分けられる。
 ・妄想気分
 ・妄想着想
 ・妄想知覚

1つ目の妄想気分とは、形を成さない妄想で、周囲が不気味で驚異的に感じられる妄想。世界没落体験として現れることがある。

2つ目の妄想着想とは、突然ひらめき、それを確信する体験。「私は神だ!」と確信する。過去の記憶が突然新しい意味を帯びて思い出される。

3つ目の妄想知覚とは、実際知覚したことに了解不可能な意味が与えられ、強く確信された妄想。「通り過ごしの異性を自分の恋人と思い込む」など。

▽ 2.二次妄想
妄想様観念と呼ばれ、了解可能な動機から生ずる妄想。幻聴や作為体験などを解釈するために生じた一時妄想でない分裂病の妄想や、分裂病以外の疾患にみられる妄想のほとんどがこれにあたる。

【キーワード】
●妄想
●絶対的な確信
●訂正不能
●信念
●一次妄想
●二次妄想
 
 
□ 2.妄想の内容からの分類
妄想は内容的に以下の4つに分けられる。

 ・被害妄想
 ・微小妄想
 ・誇大妄想
 ・その他の特殊な妄想

妄想の内容で一番多いものは、「人が自分に注目し、追いかけ、除け者にし、迫害する」という被害的な内容。

▽ 1.被害妄想(初期に多い)
自分が他者から害を与えられるという内容の妄想を被害妄想という。被害妄想は、以下の4つに区分される。

 ・関係妄想
 ・追跡妄想・迫害妄想
 ・嫉妬妄想
 ・その他

1つ目の関係妄想とは、取るに足らない他人の態度や話が、自分のことを言っていると確信する妄想。

2つ目の追跡妄想・迫害妄想とは、誰かが自分をつけ狙って後をつけてくる妄想。

3つ目の嫉妬妄想とは、配偶者や恋人が浮気をしているという妄想。

【キーワード】
●被害妄想
 
 
▽ 2.微小妄想
自分に対する過小評価を内容とする妄想。抑うつ気分や自我感情低下を背景にしている場合が多い。自分が貧乏になったという貧困妄想、自分は直る見込みのない病気であるという心気妄想などがある。

 ・貧困妄想
 ・心気妄想

【キーワード】
●微小妄想
 
 
▽ 3.誇大妄想
注目されるという確信が、「自分は特別な人間」という確信につながったもの。現実よりも自己の能力、経済力、業績、血統などを現実よりも過大に評価する。自分は高貴な生まれであるという血統妄想。「相手が自分のことを好きだ!」と確信する恋愛妄想などがある。

 ・血統妄想
 ・恋愛妄想

【キーワード】
●誇大妄想
 
 
□ 2.幻覚
外界の刺激がないのにも関わらず、知覚される異常体験で、「対象なき知覚」(エスキロール)とよばれる。

幻覚を示す感覚により

 ・幻視
 ・幻聴
 ・幻嗅
 ・体感幻覚

に分けられる。

精神分裂病のほとんどは幻聴。幻聴とは、自分にだけ他者の声が聞こえる聴覚的な幻覚。被害的な内容のものが多い。誇大的なものも少なくないが、相応の扱いを受けないことで被害妄想に発展することが少なくない。

独語空笑は幻聴に対して応答している状態。

幻聴は、以下の3つに大別される

 ・対話性幻聴
 ・機能性幻聴
 ・要素性幻聴

1つ目の対話性幻聴とは、自分に話しかけてくる幻聴。天井から話し声が聞こえ、それに答える体験。

2つ目の機能性幻聴とは、機械などの音に伴って幻聴が聞こえる体験。車の騒音つれて悪口などが聞こえてくる。

3つ目の要素性幻聴とは、物音などの幻聴。アルコール中毒や薬物中毒に出現する症状で、精神分裂病にはない。本当は音がしないのにも関わらず、音が聞こえる体験。

▽ 2‐1.幻聴と関係がある体験
主なものは以下の通り。

 ・思考化声
 ・思考伝播
 ・思考吹入
 ・思考奪取

1つ目の思考化声とは、幻聴に近い体験。

2つ目の思考伝播とは、考えていることが言語化していないのにも関わらず外界に伝わってわかってしまうとする体験。

3つ目の思考吹入とは、他人の思考が自分の中に無理矢理入ってくる体験。最後の思考奪取とは、考えが外に奪われる体験である。

これらの現象は自己と外界の境界が弱くなることで起る。

【キーワード】
●対象なき知覚
●幻覚
●幻聴
 
 
▽ 2‐2.幻聴以外の幻覚
主なものは以下の2つ。

 ・幻視
 ・体感幻覚

1つ目の幻視とは、意識障害の際の代表とされ視覚的な幻覚のこと。分裂病では急性期にみられ軽い意識変化を伴うことが多い。幻視の特殊なものに、自分の姿を目の前に見る自己像幻視(自己二重身)、考えが文字で目の前に見えてくる考想可視などがある。

2つ目の体感幻覚とは、通常意識にのぼらないものであるが「体の中に虫が入ってきて腐った」、「頭蓋骨の中を虫が動き回る」、「脳が溶けていく」など内臓感覚の幻覚のことである。分裂病、境界例、うつ病の心気妄想、心気症などでみられる。

【キーワード】
●幻聴
●独語空笑
●幻視
 
 
□ 3.作為思考・影響体験
「させられ体験」ともいう。自分が能動的に何かをしているという意識が障害され、他人に何かをさせられている、何かを考えさせられていると体験する。

分裂病に典型的に見られ、シュナイダーの一級症状の一つ。

【キーワード】
●作為思考
●影響体験

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臨床心理学各論 017 精神分裂病・客観症状

■ 客観症状と主観症状 ■

▼ 1.客観症状
第三者が客観的にみることのできる症状。

□ 1.動作や表情の異常
感情的接触がない。人間的な接触をしようとしても、何となくうまく通じ合えないもどかしさが残る。姿勢・表情は硬く、行動は全体的に不自然である。視線が動かない、表情が乏しい、滑らかさにかける、パターン化された情動形式など。

すべての患者にあるわけではなく、妄想型にはみられない。

□ 2.自閉性
自分の内面の主観世界に閉じこもり、現実への関心を失う。

□ 3.両価性
同一対象に対して同時に全く相反する感情をもつ。

□ 4.感情の障害
無関心や感情純麻、感情不安定。

□ 5.思考障害(thought disorder)
考えがまとまらない、余計な考えが浮かぶ、観念同士のつながりが乱れるなどの連想弛緩や、意味のない言葉を羅列する支離滅裂がみられる。

また、「スイスは自由を愛する。私は自由を愛する。だから私はスイスが好き!」など、「おかしな三段論法」や、本人だけしかわからない言葉・文字を作り、使用する言語新作を行う。

□ 6.緊張病性症候群(稀)
緊張病性症候群はとても強い症状だが、最近は少ない。理由もなく無目的に衝動的な動作が生じる緊張病性興奮や、随意的行動がほとんど消失する緊張病性昏迷がみられる。

昏迷状態にある患者は、寝たままでも食事も排泄も自分で行わなくなる。ほとんどの場合、外界認知はちゃんと行われているが、ひどい場合になると行動がピタッと止まってしまい動かなくなる。

□ 7.社会的活動力の低下
何らかの知的障害や脳に見るべき異常がないのにも関わらず、社会性を失い、引きこもる。決して職場に恵まれていないわけではない。容易に回復しない。

【キーワード】
●客観症状
●動作や表情の異常
●緊張病性症候群
●緊張病性興奮
●緊張病性混迷

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臨床心理学各論 016 精神分裂病・シュナイダーの一級症状

▼ 2.シュナイダーの一級症状

□ 1.思考化声
考えが声になる、本を読んでいると先に読む声がする。

□ 2.対話性幻聴
幻聴同士が会話している幻聴。独語空笑は幻聴に対する応答。

□ 3.身体への影響体験
電気をかけられると感じたりする。

□ 4.思考奪取
自分の思考が外に奪われる影響体験、その他思考領域での影響体験。

□ 5.自分の行為に随伴して口だしする幻聴
例えば、顔を洗っていると「顔を洗っている」と聞こえる。

□ 6.思考伝播
自分の考えが外に伝わってわかってしまうと体験する。

□ 7.妄想知覚
知覚したことを何か意味のないことに意味づけをする。例えば「花瓶が壊れた、私が死ぬという意味だ」など。

※あの最後の葉が散ったとき、私は主のところに召される、など。

□ 8.感情や衝動や意志の領域に現れるその他の作為体験・影響体験
例えば、「性的な感情を吹き込まれる」、「グルグル歩き回らされる」など。

【キーワード】
●シュナイダーの一級症状
●思考化言
●対話性幻聴
●身体への影響体験
●思考奪取

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臨床心理学各論 015 精神分裂病・ブロイラーの4A

■ 精神分裂病の理論 ■

▼ 1.ブロイラーによる分類(ブロイラーの4A)

□ 1.自閉性(Autisim)
自分の殻に閉じこもり、内的な妄想的世界や病的体験の世界に没頭し、現実との接触が障害されている。

「現実との生ける接触の喪失」は、分裂病の基本障害を捉えたミンコフスキーの言葉である。

二重の見当識(double orientation/Bleuler.E)をもち、妄想的な部分と現実的な部分とを使い分けて生活する。病識がないのに入院を受け入れるのが、その典型である。

□ 2.両価性(Ambivalence)
矛盾した感情を同時に抱く現象。同一人物を愛して憎んだり、苦しいといいながら笑顔を示したりする。

通常、一方の面(望ましくない面)が無意識下に抑圧され、その人の行動に影響を与えるとされる。

□ 3.感情の障害(disturbance of Affect)
無関心が進行し感情純麻(表情が全くなくなる)や、一つの感情が長続きせず急激に変化する感情不安定の状態になる。

□ 4.連想弛緩(loosening of Association)
考えがまとまらず、余計な考えが浮かぶ。観念同士のつながりが乱れる。末期になると、意味のない言葉を羅列する支離滅裂の状態になる。

□ 5.副症状
多く存在するが代表は幻聴・幻視などの幻覚、妄想、観念念慮。
妄想とは、現実にはありえない誤った確信の世界を持ち、訂正不可能な信念。観念念慮とは、他者の言動が自分に関係していると体験する症状。

被害的な内容のものが多い。

【キーワード】
●ブロイラーの4A
●自閉性
●両価性
●感情の障害
●連想弛緩
●副症状

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臨床心理学各論 014 統合失調症

■ 精神分裂病(統合失調症) ■

1911年にBleuler.E(ブロイラー)によって提唱された障害。精神分裂病の基本的な障害は様々な精神機能が統合して機能することの障害にある、と考え分裂という用語を用いた。

▼ 1.定義
原因的には内因性の精神病(psychosis)で、主として青年期に発病し、しばしば進行性に経過し、末期には特有の人格欠陥にいたる可能性を持つ。

▼ 2.症状
人格・思考・感情・行動・興味関心・対人関係などに障害をきたす。

身体症状に特徴的なものはない。
精神症状は、以下のように大別される(タイプ別に整理)。
 ・主観症状
 ・客観症状

  または
 ・陽性症状
 ・陰性症状

【キーワード】
●内因性
●精神病
●青年期に発症
●進行性
●特有の人格欠陥

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臨床心理学各論 013 精神病

■ 精神病 ■

精神病とは、病識をもたず、現実検討能力が極めて低く、自己治癒力も低い心の病の一群。精神障害の中で病理水準が1番高い。

精神分裂病(統合失調症)や躁うつ病がこれにあたる。

※精神病状態
精神病状態とは、現実と非現実の区別がつかない現実検討能力の障害された状態をいう。日時・場所・人物に対する認識がなくなり、幻覚や妄想といった非現実的な世界が混在し、日常生活が困難となる。

【キーワード】
●現実検討能力の障害
●幻覚・妄想
●日常生活が困難

※このサイトでは、心理学書籍と連動するために「統合失調症」(Schizophrenia)を「精神分裂病」と併記します。

注・2002年(平成14)7月に日本精神神経学会が病名を「精神分裂病」を「統合失調症」変更しました。

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臨床心理学各論 012 神経症と心身症

■ 神経症と心身症の違い ■

▼ 1.神経症
 ・精神症状の比重が大きく、症状が多発し、一過性で、移動しやすい
 ・機能的障害で、心因性に生じる
 ・情動の認知は豊かで、患者の訴えが多い
 ・情動の言語化や不安の表出は多い
 ・社会には不適応が多い
 ・心理療法が中心で、補助的に抗不安剤を用いる
 ・医学的には直しようがない

▼ 2.心身症(より身体がメイン)
 ・身体症状の比重が大きく、特定の器官に固定して持続的に症状が現れる(胃潰瘍など)
 ・障害は機能的障害にとどまらず、しばしば器質的障害を伴う(器官がダメージ)
 ・体質的・身体的な基盤があり、これに心理社会的因子が加わって症状が生じる
 ・情動の認知は乏しく、失感情(言語)症(アレキシサイミア)的である
 ・情動の言語化や不安の表出は少ない
 ・社会には過剰適応が多い(一生懸命適応しすぎ)
 ・心身両面からの総合的な治療を必要とし、医学的にも異常が認められる

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臨床心理学各論 011 心身症

■ 心身症(psychosomatic diseases) ■

▼ 1.概論
心身症とは、「身体症状を主とするが、その診断や治療に心理的因子についての配慮が特に重要な意味を持つ病態」と定義される。

広義に理解すると、身体的原因によって発生した疾患でも、その経過に心理的因子が重要な役割を演じている症例や、一般に神経症とされるものであっても身体症状を主とする症例は、広義の心身症として扱うこともある。

心身症の条件は以下の通り。
 ・身体症状の成立に精神的要因が重要な役割を担っていること
 ・身体症状が自律神経系支配領域の器官変化にまで至ること
 ・身体症状に器質的ないし機能的障害が認められること

▼ 2.症状
シフネオスらは、心身症に失感情症(アレキシサイミア)とい概念を提唱し、自分の内的な気づきとその言語的表現が制約されている状態であるとした。自分の感情状況をうまく表現することができない状態である。

身体面にでる症状としては、循環器系に本能性高血圧症・心筋梗塞・狭心症・心臓神経症、呼吸器系に気管支喘息、消化器系に胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、神経・筋肉系に緊張型頭痛・自律神経失調症、内分泌・代謝系に糖尿病・神経性過食症。

その他の心身症としては、心因性無月経、更年期障害、円形脱毛症、アトピー性皮膚炎、神経症頻尿などがある。

▼ 3: 治療
身体は専門の医師が、心は別の専門の医師が担当する。心理治療は、一般精神療法、催眠と自律神経訓練法、行動療法、森田療法などが用いられる。また薬物療法では、主に抗不安剤、抗うつ薬、鎮静催眠剤が使用される。

【キーワード】
●心身症
●心理的因子
●身体症状が主
●器質的変化
●アレキシサイミア

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臨床心理学各論 010 神経症の成因と予後

■ 3: 神経症の成因 ■

 ・心因・環境因
 ・心理的疲労
 ・心理的防衛機制(症状形成)
 ・特徴的な性格
 ・素質(体質)
 ・社会的条件など。

予後は、神経症から精神病への移行はマレで、比較的早く症状の消失する群と長期化する群とがある。

神経症に急性というものはない。そもそも神経症は慢性病であり、5年以上の経過をとるものが約半数ともいわれている。

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臨床心理学各論 009 心気神経症

▼ 7.心気神経症
些細な身体感覚あるいは兆候を重症な疾患の症状だと考え、しかも医師の検査や説得によってその非現実性を指摘されても、なかなかそれへのこだわりを捨てられない神経症(ささいな病気を超重症だと考える)。

心身の些細な不調にこだわり、苦痛を訴え続ける。よく訴えられるものとしては、睡眠障害・頭痛・肩こり・全身倦怠・便秘・めまい・耳鳴り・吐き気・腹痛などの身体症状が多い。

精神分裂病などで心気症状が出現する時は、
  ・体感異常
  ・体感幻覚
  ・心気妄想
など奇妙な内容が異常な確信を持って語られる点で異なる。

心気神経症の患者は、医者を渡り歩くという意味で「ドクターショッピング」と呼ばれる。ただし、本当に病気の時もあるので注意が必要である。

【キーワード】
●心気神経症
●身体感覚へのこだわり
●ドクターショッピング

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臨床心理学各論 008 抑うつ神経症

▼ 6.抑うつ神経症
憂鬱気分・悲哀・制止・外界への関心の低下・自信の損失などのうつ症状を主症状とする神経症。内因性うつ病との鑑別が問題となる。

抑うつ神経症は、
  ・症状が内因性のものに比べ軽症(生活に困るほどのものではない)
  ・不安などの感情が強くストレスとの関係がみられる
  ・人格障害を伴う
  ・日内変動がみられない
  ・薬物療法が効きにくい
  ・対象喪失(特に肉親を亡くした場合)
などと結びつきがみられることが多い。

【キーワード】
●抑うつ神経症
●軽症
●ストレスとの関連
●人格障害
●日内変動は見られない
●薬物療法は効きにくい
●対象喪失

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臨床心理学各論 007 離人神経症

▼ 5.離人神経症
自己の存在や、外界、自己の身体に関する自己所有感(自分に所属している感じ、自分が自分である感じ)が失われる意思体験。「自分が自分でない感じがする」など非現実感、疎外感の訴えがある。離人症性障害がこれにあたる。

主な症状は以下の通り。
 ・「外界」の疎外感
 ・自己の「身体」に関する疎外感
 ・自己の「存在」に関する疎外感

現実検討能力は保たれており、十代後半から二十代後半の女性に多い。離人症体験は、統合失調症や内因性うつ病などの症状としても生じることがあるが、健常者でも過労時に体験することもある。

【キーワード】
●離人神経症
●自己の存在・外界・自己の身体
●自己所有感
●疎外感
●女性に多い

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臨床心理学各論 006 ヒステリー

▼ 4.ヒステリー
現実に問題となっていることを解決することが出来ず、葛藤が生じ、その葛藤のために自我の安定を保つことが困難な状況になると身体症状が生じることがある。

こうした病態をヒステリーとよぶ。

転換ヒステリーと解離ヒステリーがある。

▼ 4‐1.転換ヒステリー(conversion type)
神経疾患や身体疾患では説明できず心理的要因を背景にもつ症状を、DSM-Ⅳでは転換性障害とよぶ。

転換とは、抑圧された感情や欲動など心理学的問題が、身体的次元に姿を変えて現れること。飲み込めない、失声、失明、見えにくい、難聴、運動麻痺、痙攣発作、意識喪失などを示す。身体症状が多様に変遷するケースと特定の単一症状に固定するケースがある。

□ 1.転換症状の特徴
神経学的所見は見出されない。症状は患者の言葉の代わりの身体言語である。症状を持つことにより、患者は疾病利得を得る。必ずしも常ではないが、患者は一見重症な症状について無関心である。

※疾病利得
症状の発症や維持により患者に何らかの利益を得ること。自我防衛を果たす一次的利得と、嫌悪事態から回避する二次的利得がある。 

□ 2.治療
適切な診断と患者との間で病識・治療理論を共有することが重要。心因性疾患であることを説明しておかないと、患者は身体症状だと思いこみ、疾病利得に逃げ込んで症状の慢性化、固定化へと繋がる恐れがある。

【キーワード】
●転換ヒステリー
●転換性障害
●身体言語
●疾病利得
 
 
▼ 4‐2.解離ヒステリー(dissociative type)
DSM-Ⅳでは、解離性障害の中の
 ・解離性健忘(心因性健忘)
 ・解離性遁走
の2つがそれにあたる。

解離性健忘とは、嫌な体験が思い出せなくなる状態。通常の忘れ方とは異なり、丸ごと忘れることが特徴。

一方、解離性遁走(とんそう)とは、突然家庭や職場から離れ放浪し、過去の一部または全部を想起することが出来なくなる状態。通常ストレスの強い状況と関連し発症する。

□ 1.解離とは
解離とはジャネが用いた概念で、意識の上位構造と、下位構造との統合が失われる過程。本来一つになっているはずの人格の統合度がゆがみ、二つもしくはそれ以上の下位人格に分離するという意味。

※DSMの解離性障害は、次の4つ。
1.解離性健忘
重要な個人情報で、ストレスの強い性質を持つものが想起不可能となる。

2.解離性遁走
かつては心因性遁走とよばれたもので、放浪し、過去を想起することが出来ない。

3.解離性同一性障害
いわゆる多重人格性障害といわれるもの。2つまたはそれ以上の、はっきりと区別できる人格が存在する。

4.離人症性障害
自分の精神または身体から遊離して、自分が傍観者のように感じる障害。

【キーワード】
●解離ヒステリー
●解離性障害
●解離性健忘
●解離性遁走
●解離

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臨床心理学各論 005 強迫神経症

▼ 3: 強迫神経症
強迫観念・強迫行為が反復・持続し、時間の浪費や回避行動のために日常生活・人間関係が困難になることを特徴とする。人口の2から3%に見られ、過半数はうつ病と合併する。

□ 1.強迫思考
 ・バカバカしい(もしくは不快な)考えやイメージが
 ・意思に反し繰り返し頭に浮かんできて
 ・止めようと思っても意志ではどうにもできない

強迫思考は心理的防衛規制による不快の加工の産物と考えられる。フロイトは肛門性愛の基礎の上に、反動形成や取消しといった防衛機制が働いて症状が構成されていくと仮定した。

□ 2.強迫行動
上記の強迫思考への対抗策としてとられる行動で、不安を軽減するために出現する。第三者が無理矢理その行動を中止させると、強烈な不安が前に出てくる。

たしかめ、洗いなどが強迫行動に当たる。

□ 3.経過・治療
一般的に長い。多種多様な強迫症状を同時的、あるいは継時的に示す例と一つの強迫症状を長く続ける例がある。

治療については、エクスポージャーと反応妨害法を用いる行動療法や、薬物療法の有効性が明らかに。

【キーワード】
●強迫神経症
●強迫思考
●バカバカしいイメージ
●意思に反し繰り返し
●どうにもならない
●強迫行動
●行動療法

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臨床心理学各論 004 恐怖神経症

▼ 2.恐怖神経症
恐怖神経症とは、特定の対象に対する強い恐怖が慢性的に持続し、日常生活に支障をきたすものである。たいして危険でも脅威でもないはずの対象や状況に対し、不相応で激しい恐怖感を覚え、そのことが不合理だとわかっていても、その恐怖に駆られ、その対象や場面を回避しようとする。

□ 1.種類
 ・他人といることで不安と緊張が高まり、軽蔑・不快感を感じ避けようとする対人恐怖
 ・類似したものとして赤面恐怖
 ・視線恐怖
 ・体臭恐怖
 ・醜形恐怖
 ・動物恐怖

 ・自分だけ取り残されるのではないかと感じる広場恐怖
 ・類似したものとして閉所恐怖
 ・体に触れるもの全てが汚染され、不潔であると感じる不潔恐怖
 ・その他に高所恐怖
 ・暗所恐怖
 ・先端恐怖
など恐怖の対象別に分類される。

経過は、慢性的だが青年期から成人期にはいるにつれて軽快することもある。精神分析的心理療法や系統的脱感作などが有効である。

【キーワード】
●特定の対象に対する強い恐怖
●不相応
●不合理
●回避
●精神分析的心理療法
●系統的脱感作

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臨床心理学各論 003 不安神経症

■ 2: 神経症各論 ■

▼ 1.不安神経症
アメリカの医師ピアートにより、現代文明のもとでの過労からくる神経機能の消耗を意味する神経衰弱という病名が作られた。

フロイトは、この群から

 ・不安発作
 ・不安発作への予期不安

あるいは

 ・心悸高進のような身体症状による不安表出とする群

を分離し、不安神経症と名づけた。

□ 2.特徴
初発時、突然理由のない説明しがたい不安(不安発作)にみまわれる。身体症状として、呼吸困難・胸の行動が激しくなる・胸の締め付けられる感じ、発汗、めまい、手足の痺れ、気の遠くなるような感じ、ふるえ、などいくつかの身体症状が伴う。

発作が収まった後、もしくは発作と発作の間にも慢性不安状態となる。また、「再び発作がやってくるかもしれない」という予期不安があることも特徴である。不安が未来に対する情動反応である以上、予期不安こそ不安の本能であるといえる。

DSM-Ⅳでは「不安障害」の中で、全般性不安障害と恐怖性障害に2分されている。全般性不安障害は、日常生活・心配の種が過剰な不安の対象となる症状。一方、恐怖性障害とは、パニック障害のことであり、突然起こってくる種々の身体症状に強烈な不安、恐怖の感情を伴う恐怖発作を繰り返し起こす障害。

経過はよいものが多いが、最低一年程度は治療が必要である。抗不安剤による薬物療法、短期の力動的な支持的心理療法、行動療法が行われる。

【キーワード】
●フロイト
●不安発作
●身体症状
●慢性不安状態
●予期不安
●全般性不安障害と恐怖性障害
●パニック障害
●薬物療法

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臨床心理学各論 002 神経症

■ 神経症(neurosis) ■

※DSMが病因論を拝した記述的方法を採用しているため、DSM-Ⅲ以降、神経症という診断名は使用されていない。神経症という診断名は「無意識的葛藤に基づいている(病因)」という仮説に基づいており、病因論に関する中立性を保つために削除されている。

■ 1: 神経症とは ■

・心因性(心理的原因)に発現する機能性の精神障害で、可逆性(直る)である。
・遺伝や脳のダメージによるものではなく、治療後には基本的に後遺症を残さない。
・障害は心身両面にわたることがある。
・特有のパーソナリティが認められている。

自分が病気であるという病識があり、現実検討能力は保たれている。適応障害は社会が容認できる程度で、重大な社会的逸脱行動を認めない。神経症の具体的症状は多種多様にわたっているが、基本的には不安を基礎とした精神症状と、自律神経系の失調による身体症状が多くの場合出現する。

【キーワード】
●心因性
●可逆性
●心身両面
●特有のパーソナリティ
●病識あり
●逸脱行動なし
●多種多様
●不安を基礎とする
 
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臨床心理学各論 001 ストレス

■ ストレス概論 ■

医学では、生体に様々な刺激が加わった時、それに対して起こる反応で、病気の原因となりうる肉体的、化学的、感情的緊張のことをいう。ストレスとは、もともと「圧力」や「圧迫」意味したが、1930年代後半にカナダの生理学者セリエによって、
 ・「外界のあらゆる要求によってもたらされる身体の非特異的反応」
を表す概念として提唱された。

その後、ラザラスとフォルクマンは、環境からの要求に対する認知的評価やコーピングという個人的変数を導入し、環境と個人との相互作用を強調する心理的ストレス・モデルを提唱した。

【キーワード】
●セリエ
●認知的評価
●コーピング
●心理的ストレス・モデル
 
 
心理的ストレス・モデルでは、日常(daily hassless)から潜在的ストレッサーが湧き上がると、個体内で状況に対する認知的評価が、
 ・一次的評価
 ・二次的評価
と2度行われる。
 
 
▼ 1.一次的評価
 ・潜在的ストレッサーが自分にとって重要な意味があるのか?(関係性の評価)
 ・自己評価や社会的評価に対し、害や損失をもたらすのか?(脅威・挑戦の評価)
 
 
▼ 2: 二次的評価
一次的評価で認知した問題が、自分でコントロール可能か?

認知された問題が自分にとって重要なものであり、脅威や挑戦として、さらにコントロール不可能なものとして評価されたとき、抑うつや不安、不機嫌、怒り、興奮、高揚感などの感情が生じる。これを情動的反応といい、情動反応が生じてはじめて、その出来事や要求がストレスへと変化する。

こうした評価を経て喚起された情動的反応は、それを解決することを目的とした行動を動機付ける。

そのようなあらゆる認知的および行動的努力をコーピングという。コーピングは、そのスタイルの違いにより、問題焦点型と情動焦点型に2分される。

※流れ
認知された問題
 ・重要
 ・脅威・挑戦
 ・コントロール不可能
→抑うつ・不安・不機嫌・怒りなど(情動的反応)
→ストレスへ

この情動的反応の解決を目的とした行動(コーピング:▼3へ)
 →問題焦点型(状況を直接的に変化させようとする:▼1へ)
 Or
 →情動焦点型(情動を低減させようとする:▼2へ)
 
 
▼ 1.問題焦点型
状況を直接的に変化させようとする努力。状況がコントロール可能であると評価された場合に、その頻度は高まる。
 
 
▼ 2.情動焦点型
喚起された情動を低減する努力。状況がコントロール不可能であると評価された場合に、この頻度は高まる。
 
 
▼ 3.コーピング資源
主なものは
 ・疲労や消耗に耐えるような身体的健康
 ・行動をどの程度うまく行うことが出来るかという認知
 ・成功体験である自己効力感
 ・問題を対処するために方略を考え実行する問題解決スキル
 ・円滑な対人関係を形成し、それを保持するための技能である社会的スキル
 ・他者から提供される有形または無形の援助であるソーシャル・サポート
など。

コーピングにより問題焦点型と情動焦点型かが決定される。基本的には、コーピング資源があると問題焦点型に、ないと情動焦点型になる。

【キーワード】
●ストレッサー
●一次的評価と二次的評価
●問題焦点型と情動焦点型
●コーピング資源
 
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