臨床心理学特論 030 子どもの患者の一般的特徴
■ 臨床心理学特論 030 子どもの患者の一般的特徴 ■
子どもの特徴として、人格は発展途上で流動的な状態にあり、自我も未熟である。当然、防衛は脆弱で、認知能力・超自我にも限界があり、すぐ不安になりやすく、魔術的思考や万能感が優位になりうる状態である。
これについて5つの主題で考えることにする。
■ 1.子どもの自我の不安定さ ■
子どもの自我は発展途上であるため、大人より流動的で、変動や退行を起こし、快楽原則に支配された一次過程の世界に接近する。従って子どもの治療で、子どもは快感や不安を生身で表現し、直接行動やプレイという形式で問題をあらわにするといった行動化が前面に現れる。
▼ 1.動機づけの能力
子どもは治療開始時点において、治療に対する動機づけ欠いている。治療環境は恐い場所であり、家族に強いられたために参加しただけ、というのが子どもの典型的態度である。その意味で大人の患者にみられるような動機づけは期待できない。それゆえセラピストがきちんと動機づけをすることが後々のセラピーに影響を与えることとなる。子どもが納得できるようにどうやって作業同盟を結ぶかがポイントである。
▼ 2.苦痛や不安への耐性
たいていの子どもは、自分に何か問題があるということに気付いていないという点で大人の患者とは異なる。内的な問題を認める能力や、小々の不安や不快に耐える能力がかけているからである。それゆえ子どもは問題を外在化させ、非難を外に移動する傾向が非常に強い。子どもの患者は、治療の初期段階では、意欲的な参加者ではないのである。
▼ 3.脅威を与える対象としての治療者
最初から動機づけされている子どもは少なく、むしろ不安生成状況を避けようとして、自分が遭遇している攻撃性や攻撃動機を治療者に投影する方が典型的である。そのため子どもが耐えうるフラストレーションの強度を見積もり、子どもの感情状態に調律する必要がある。治療初期における治療者の課題は、治療同盟の構築と子どもが内的な問題を意識できるようにすることである。
■ 2.子どもの行動へのニード:プレイの機能 ■
大人の心理療法においては、患者の感情生活を伝える基本的手段は言語によるものであるが、子どもはそれが困難である。子どもは言語の代わりに、言語と情緒的世界を併せもつ行動様式、プレイで表現する。
プレイは子どもの内的世界から生まれたもので、葛藤や防衛を表現しているのが典型である。アンソニーが指摘するように、「少年の患者はプレイという言語で、より自由に、自発的に、防衛せずに語る。これはこの特別な空間が日常生活の圧迫や要請から、ひとまず切り離された空間であることを、前意識的に認識しているからであろう」と考えられる。
プレイの主要機能の1つは、不安事態で子供に発生する、なまの、圧倒的な情緒を変化させて、これらの情緒の自然な表現手段を提供することである。また内面への築きの拡大に寄与する要因は、受容し、判断を保留しつつ、問題行動に直面化させるという治療者の一般的なスタイルと、同一化である。陽性の愛情が育まれれば、子どもは治療者との同一化を望むようになり、多くの場合治療者は二次過程の思考を促すことになる。
■ 3.子どもの依存状態:両親の役割 ■
身体面、情緒面で家族に強く依存していることも、子どもの治療プロセスに大きく影響する主要な相違点である。親子関係の理解は診断過程の中心におかねばならず、必要に応じて親子関係の問題の改善も子どもの治療過程に組み込まねばならない。不幸なことに両親とのワークは、抵抗にあったり、ジャマ立てされたりすることがある。両親との接触をほとんど、あるいは全く持たないことを指示する専門家や、ためらいつつもこの「重荷」を引き受ける専門家もいるが、チェシックは親のワークは子どもの治療における絶対必要な中心点であり、ほとんどの事例の成否は、ワークのでき具合によると考えている。
ここの子どもの治療で、診断上まず必要なのは、過去と現在の親子相互作用の見直しである。
※クラインは、子どもの内的な世界を優先している。子どもが変われば、親が変わる。親子ワークを必要としないが、それだけ子を変えていけるというセラピストの能力があれば可能だが、現実はなかなかうまくいかない。それゆえ、母子並行面接が必要となる。
■ 4.子どもの発達過程:成長へのニード ■
大人と子どものワークに主要な相違点として、大人の心理療法ではあまりみられない重要な付加機能が治療者に存在する。それは、子どもの成長に伴う急速な変化である。子どもは発達過程上にいるため、子どもの状態は現在進行中の発達過程の特徴を表し、この新しい心の構造が形成されていく過程で、治療者は子どもの発達へのニードを促進する中心的役割を担う。治療者ができる援助は、何よりもまず言語化過程をじっくりと援助することである。子どもの心理療法の重要な一面は、発達の表れを直接明確化したり解釈する「発達促進」機能を治療者が行なう。
■ 5.子どもに対する対抗反応:治療者への内的反応 ■
子どもとのワークでは、並々ならぬプレッシャーやストレスが存在する。これにより治療者には強い内的反応が生じ、小さな患者への共感や理解が妨げられる。
子どもの治療者がワークにおいて耐えなければならない感情は、困惑と完全な方向喪失、子どもに誘発された怒り、両親や家族しだいでワークが成立せざるを得ない治療者の無力感である。加えて子どもの自我状態や依存、なかなか治療に乗り気にならない態度から、治療者側が「消耗する」こともある。
加えて子どものワークでは、子どもの病理に対する両親の悪影響を治療者が認識すれば、必ず救援空想が生まれる。こうした内的衝動から治療過程が損なわれる可能性もある。
これらの対抗反応は、それ自体子どもの臨床か特有のものではない。困惑、怒り、無力感はどんな人の臨床でもあることである。こうした内的な否定感情のみならず治療者は、強い肯定的感情を抱くことがある。この感情は、逆に、治療過程の大きな障害になる恐れが少なからず存在する。臨床家自身が治療的自己評価を保つことは、上記の反応と逆転移感情を区別することが大切である。
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