カテゴリー「第26回 臨床心理学特論・1」の30件の記事

臨床心理学特論 030 子どもの患者の一般的特徴

■ 臨床心理学特論 030 子どもの患者の一般的特徴 ■

子どもの特徴として、人格は発展途上で流動的な状態にあり、自我も未熟である。当然、防衛は脆弱で、認知能力・超自我にも限界があり、すぐ不安になりやすく、魔術的思考や万能感が優位になりうる状態である。

これについて5つの主題で考えることにする。

■ 1.子どもの自我の不安定さ ■
子どもの自我は発展途上であるため、大人より流動的で、変動や退行を起こし、快楽原則に支配された一次過程の世界に接近する。従って子どもの治療で、子どもは快感や不安を生身で表現し、直接行動やプレイという形式で問題をあらわにするといった行動化が前面に現れる。

▼ 1.動機づけの能力
子どもは治療開始時点において、治療に対する動機づけ欠いている。治療環境は恐い場所であり、家族に強いられたために参加しただけ、というのが子どもの典型的態度である。その意味で大人の患者にみられるような動機づけは期待できない。それゆえセラピストがきちんと動機づけをすることが後々のセラピーに影響を与えることとなる。子どもが納得できるようにどうやって作業同盟を結ぶかがポイントである。

▼ 2.苦痛や不安への耐性
たいていの子どもは、自分に何か問題があるということに気付いていないという点で大人の患者とは異なる。内的な問題を認める能力や、小々の不安や不快に耐える能力がかけているからである。それゆえ子どもは問題を外在化させ、非難を外に移動する傾向が非常に強い。子どもの患者は、治療の初期段階では、意欲的な参加者ではないのである。

▼ 3.脅威を与える対象としての治療者
最初から動機づけされている子どもは少なく、むしろ不安生成状況を避けようとして、自分が遭遇している攻撃性や攻撃動機を治療者に投影する方が典型的である。そのため子どもが耐えうるフラストレーションの強度を見積もり、子どもの感情状態に調律する必要がある。治療初期における治療者の課題は、治療同盟の構築と子どもが内的な問題を意識できるようにすることである。

■ 2.子どもの行動へのニード:プレイの機能 ■
大人の心理療法においては、患者の感情生活を伝える基本的手段は言語によるものであるが、子どもはそれが困難である。子どもは言語の代わりに、言語と情緒的世界を併せもつ行動様式、プレイで表現する。

プレイは子どもの内的世界から生まれたもので、葛藤や防衛を表現しているのが典型である。アンソニーが指摘するように、「少年の患者はプレイという言語で、より自由に、自発的に、防衛せずに語る。これはこの特別な空間が日常生活の圧迫や要請から、ひとまず切り離された空間であることを、前意識的に認識しているからであろう」と考えられる。

プレイの主要機能の1つは、不安事態で子供に発生する、なまの、圧倒的な情緒を変化させて、これらの情緒の自然な表現手段を提供することである。また内面への築きの拡大に寄与する要因は、受容し、判断を保留しつつ、問題行動に直面化させるという治療者の一般的なスタイルと、同一化である。陽性の愛情が育まれれば、子どもは治療者との同一化を望むようになり、多くの場合治療者は二次過程の思考を促すことになる。

■ 3.子どもの依存状態:両親の役割 ■
身体面、情緒面で家族に強く依存していることも、子どもの治療プロセスに大きく影響する主要な相違点である。親子関係の理解は診断過程の中心におかねばならず、必要に応じて親子関係の問題の改善も子どもの治療過程に組み込まねばならない。不幸なことに両親とのワークは、抵抗にあったり、ジャマ立てされたりすることがある。両親との接触をほとんど、あるいは全く持たないことを指示する専門家や、ためらいつつもこの「重荷」を引き受ける専門家もいるが、チェシックは親のワークは子どもの治療における絶対必要な中心点であり、ほとんどの事例の成否は、ワークのでき具合によると考えている。

ここの子どもの治療で、診断上まず必要なのは、過去と現在の親子相互作用の見直しである。

※クラインは、子どもの内的な世界を優先している。子どもが変われば、親が変わる。親子ワークを必要としないが、それだけ子を変えていけるというセラピストの能力があれば可能だが、現実はなかなかうまくいかない。それゆえ、母子並行面接が必要となる。

■ 4.子どもの発達過程:成長へのニード ■
大人と子どものワークに主要な相違点として、大人の心理療法ではあまりみられない重要な付加機能が治療者に存在する。それは、子どもの成長に伴う急速な変化である。子どもは発達過程上にいるため、子どもの状態は現在進行中の発達過程の特徴を表し、この新しい心の構造が形成されていく過程で、治療者は子どもの発達へのニードを促進する中心的役割を担う。治療者ができる援助は、何よりもまず言語化過程をじっくりと援助することである。子どもの心理療法の重要な一面は、発達の表れを直接明確化したり解釈する「発達促進」機能を治療者が行なう。

■ 5.子どもに対する対抗反応:治療者への内的反応 ■
子どもとのワークでは、並々ならぬプレッシャーやストレスが存在する。これにより治療者には強い内的反応が生じ、小さな患者への共感や理解が妨げられる。

子どもの治療者がワークにおいて耐えなければならない感情は、困惑と完全な方向喪失、子どもに誘発された怒り、両親や家族しだいでワークが成立せざるを得ない治療者の無力感である。加えて子どもの自我状態や依存、なかなか治療に乗り気にならない態度から、治療者側が「消耗する」こともある。

加えて子どものワークでは、子どもの病理に対する両親の悪影響を治療者が認識すれば、必ず救援空想が生まれる。こうした内的衝動から治療過程が損なわれる可能性もある。

これらの対抗反応は、それ自体子どもの臨床か特有のものではない。困惑、怒り、無力感はどんな人の臨床でもあることである。こうした内的な否定感情のみならず治療者は、強い肯定的感情を抱くことがある。この感情は、逆に、治療過程の大きな障害になる恐れが少なからず存在する。臨床家自身が治療的自己評価を保つことは、上記の反応と逆転移感情を区別することが大切である。

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臨床心理学特論 029 クライエント中心療法 発展段階

■ 臨床心理学特論 029 クライエント中心療法 発展段階 ■

▼ 1: 第1段階 非指示的療法 1940-1950
カウンセラーの活動
 ・許容的雰囲気を作ること
 ・受容と感情の明瞭化
 ・クライエントに指示しないことを強調

パーソナリティ変化の基本的要因
 ・自己自身とおかれた状況についての洞察の達成

リサーチの特徴
 ・録音の抜粋例を挙げ特徴を記述
 ・リサーチの探索的発展(数量化への努力)

▼ 2: 第2段階 来談者(クライエント)中心療法 1950-1957
カウンセラーの活動
 ・感情、態度の反射を強調
 ・クライエント中心を強調

パーソナリティ変化の基本的要因
 ・自己概念と現象的立場の一致を発展させる

リサーチの特徴
 ・記述的概念の明確化
 ・新しい測定法(Qテクニック、生理学的測定)
 ・治療効果の包括的、」総合的研究の発展

▼ 3: 第3段階 体験過程療法 1957-
カウンセラーの活動
 ・基本的態度を表現するために形式にとらわれず様々な方法をとること
 ・クライエントの体験過程に焦点を当てる
 ・セラピストの体験過程を表現する

パーソナリティ変化の基本的要因
 ・自己経験、対人関係における体験の仮定がより自由に、解放的に、流動的になされるようになり、その直後の体験仮定から新しい概念化を得ていく

リサーチの特徴
 ・「治療過程」と「体験過程」の現象学的記述の発展
 ・治療過程、治療関係測定法の進歩(プロセススケール、治療関係スケール)
 

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臨床心理学特論 028 クライエント中心療法 結論と発展・応用

■ 臨床心理学特論 028 クライエント中心療法 結論と発展・応用 ■

▼ 1: 結論
ロジャーズが経験に開かれることを重視したのは、「なぜ」そのようなプロセスがおこってしまったのかというよりも、「どのように」相互作用が経験され、「何」が感じられているか、を重視したためである。ロジャーズは、客観的事実というものは存在するかもしれないが、我々はそれを知ることは事実上出来ない、としている。

主観的経験を大切にしていったのも、治療関係のプロセスの中で、自分自身と自分のクライエントの経験に出来るだけオープンであることに関心があったからだと言える。

これはクライエントの観点から、クライエントの内側の世界を理解するという強いコミットメントからくるものであり、結果セラピーの基本的事実はセラピストとクライエントが自分の枠組みの中で体験する主観的な世界とその2つの世界の相互作用として記述される。

治療関係の本質、治療関係の中でのパーソナリティ変化のプロセスに関するロジャーズの理論から、パーソナリティと人間行動の本質に関する諸仮説を導き出したのであり、その逆では決してない。

例えば、人間は実現傾向を持つものであると定義上決まっているわけではないが、セラピストとクライエントの援助関係の中で見られることは、この仮説を強く指示しているといえる。


▼ 2: 発展・応用
1960年-
エンカウンターグループ。“集中的グループ経験”で、対象はクライエントから一般の心理的成長を求める人々へ。

1974年-
人間関係の諸問題へのアプローチとして拡大。パーソン・センタード・アプローチという名称へ変わる。
 

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臨床心理学特論 027 クライエント中心療法 診断の否定と意義

■ 臨床心理学特論 027 クライエント中心療法 診断の否定と意義 ■

▼ 1: 診断の否定
ロジャーズは、診断をクライエントの依存的傾向を助長し自立を妨げ、診断が価値判断に深く関与することを考えると、少数者による多数者の支配という流れに加担することになりかねないとする。

しかし、心理学的診断の意義を否定しているわけではない。心理力動の解釈をクライエントに呈示することが有意味であり、真実であると体験されるのならば、解釈は正しいものとされる。

クライエントが現在の認知の仕方を検討・修正することを助け、自分の心因的様相について診断をし、それを受容できるような条件を準備することが正しい意味での診断活動とされる。

▼ 2: クライエント中心療法の意義(他の立場に与えた5つの影響)

1.クライエントの自己成長力の発見
ある条件さえ与えられれば、全ての生物は、生長・発展の方向へ向かう自己実現志向性をもっているという認識に立ち、その回復・発展へのパワーを促進しようとする。1942年頃は、小さいor高齢者or障害の著しいものは除外されていた。しかし、1951年以降は修正され、すべてのクライエントは一致して前進することを認めてきた。

2.初回面接時からセラピーの重視
以後、各立場とも無用な診断活動を最小にすることが一般化された。初回から治療的姿勢で処遇するようになった。

3.Personal powerの重視
治療者は根本的に触媒の役割を果たすことで、クライエント自身に潜在するpowerに目覚めさせること。

4.学派の統合を目指す
カウンセリングと心理療法の本質的差異をなくす。ロジャーズは自らの実践をtreatment → counseling → therapy と呼び、当時心理療法を行っていた精神科医との間に覇権争いを経験する。そこでロジャーズは、心理療法において何が起こり、どのような実践が可能なのかを科学的に探求し、立場・学派を越えて心理治療の理論構築を試みる。

また晩年まで、学会を作ろうとしなかったのは、資格・免許を出すことは官僚主義に陥る危険があり、人間性に潜在する知恵と建設性に信頼をおくアプローチと矛盾すると考えていたからである。しかし、周囲の熱心な声にロジャーズも遂に発足させることに同意することになる。

1986年2月
“Person-centered Review”が創刊。

1986年9月
Association for the Development of the Person-Centered Approach 第1回大会。

1988年-
International Congress of Client-centered & Experiential Psychotherapyが3年ごとに開催されることに。

5.心理療法の科学的研究の発展への貢献
心理療法のプロセスと効果に関する科学的・実証的研究を発展させた。
 ・録音と逐語記録
 ・ビデオ録画

面接場面の公開に努力し、異なる立場の相互討論に発展させた。
 ・比較対照群を設定して治療効果の測定
 ・過程の研究
 ・測定方法の開発

APAから1959年、特別科学貢献賞の第1回授与者として選ばれる。
 

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臨床心理学特論 026 クライエント中心療法・理論

■ 臨床心理学特論 026 クライエント中心療法・理論 ■

ロジャーズは、理論というものに対しきわめて懐疑的であった。理論上のモデルを時期尚早に応用すると自分自身の知見と直感に基づいた証拠に信頼を置くのが難しくなり、クライエントを認識構造に合わせて理解しようとしてしまうからである。

▼ 1: 実現傾向
ロジャーズは人間の持つ何ものにも代えがたい唯一の基本的な動因を実現傾向と呼んだ。これは他のあらゆる自然の秩序と同様な自らを維持し、その可能性を発展させ成就されようとする潜在的本質傾向で、出来るだけ高いレベルの「人間らしさ(human-boringness)」の達成に向かって進んでいくものである。

この基本的な実現傾向は、「こういうふうになるもの」と決まっているものではなく、人間性の成長の具体的な姿は個人によって大きく異なるもので、ロジャーズの理論全体の中で唯一の動因であるといえる。

この傾向は、あくまで全体として有機体に顕現するものであり、その有機体の様々な部分(自己概念など)で、この傾向が抑制、歪曲されることがあるとロジャーズは感じていた。また、この部分部分から実現に対する妨害が起こりうるとした。

▼ 2: 中核条件
多くの調査研究を経て、ロジャーズは治療的変化を促す心理的に促進的な雰囲気の構成要素に関しての結論を提示した。ただし、きわめて簡素であり、あまりにも単純化しているという非難を受けた。

□ 1.第1の要素は、自己一致(純粋さ)である。
自己一致とは、セラピストが見せかけたりせず、専門家としての役割を担ったり、その影に隠れたりしようとせずに、関係において自分自身であることを意味する。

セラピストは適切なときに、クライエントに直接伝えることが出来るように、経験的に腹の底からのレベルで自分が感じているものと接触を保ち、それらの感情を明確に意識に保っておきたいと願う、その感情でいること、といえる。

セラピストが感情や心配事をクライエントに下ろすことでも、その場限りの態度をとったり、直接的洞察を衝動的に口走ることも意味しない。セラピストが自分自身に対して抱いている自己像、自身を表現する方法、自身を見る方法、外の現実を見る方法の間に調和を経験していることが必要である。

□ 2.第2の要素は、受容(無条件の肯定的配慮)である。
肯定的な配慮に対する基本的欲求は、人間存在にとって共通、普遍的、持続的であるとロジャーズは考えていた。

セラピーに訪れる多くの人々は、この欲求がほとんど満たされていないため、自己受容を感じるため、セラピストから肯定的配慮を受けることが極めて重要となる。

「無条件の肯定的配慮」とは、セラピストの配慮にクライエントの考え、感情、行動を判定したり、評価したりしようとすることが全くないことを意味する。クライエントに対して、表出的に積極的な無欲な暖かさを経験することである。

□ 3.第3の要素は共感的理解である。
ロジャーズは、共感が3つの条件の中で一番訓練可能であるとしている。ロジャーズは、クライエントの自分自身や世界に対する見方をセラピストが可能な限り理解することを必須としている。このような理解を通してのみ、セラピストは前向きな発展をもたらす微妙な自己概念の変化を促進できるという。

ロジャーズは共感について、他者の中に流れている変化しつつある感じられた意味、その人が経験している恐怖、激怒、優しさ、混乱、その他いかなるものに対しても瞬間瞬間において敏感であることであり、その人の人生を一次的に生きること、配慮しながらその中で動き回り、その人自身が気づいていない意味を感じ取ることであるとしている。

ただし、それはその人の気づいていない気持ちをあらわにしようとするものではなく、その人が恐れていることを、セラピストの恐れを持たない目で見るままに、その人の世界で感じていることを伝えることである。セラピストは、その人の内なる世界での信頼たる同伴者である(Rogers,1980)、と述べている。

ロジャーズは、共感そのものが強力な治癒力を持つものであり、おびえきったクライエントを開放し、自らを確認させ、人間性を回復させてくれるものであるセラピーのもっとも強力な一面(Rogers,1986)としている。

□ 4.第4の要素。
上記の3条件は、セラピーに必要十分なものであるが、死を前にしてもう一つ神秘主義的で霊的な次元(Rogers,1986b)の存在を認めたものを提示している。

それは存在(プレセンス)である。自身がセラピストとしてベストの状態にあるとき、すなわち自らの内なる直感的自己の最も近くにいるとき、自らの未知なるものに触れているとき、クライエントの関係において変性意識状態にある時、どのようなことをしても癒しに満ちている、すなわち自身の存在が人を解放し援助している、としている。

そうしたときには思考と関係なく、衝動的に奇妙な振る舞いをすることがあるが、結局この行動は正しかったと、なぜかわかる。それは自身の内なる魂が外に届き、他者の内なる魂に触れたように思い、そうして関係がより大きな何物かの一部になる、と言っている。

※この第4の要素に関しては、専門書にしか掲載されていない概念である。そのため、試験ではこのことについて記述しない方が懸命である。ただ、プラス査定になるとは思うので、「晩年、上記の3つの概念に加えて・・・」と、書くならば、それが良いかと。

▼ 3: まとめ
治療場面において、クライエントは同じ目標や目的を持つことはないが、クライエントは始め貧弱な自己概念を抱き、その自己の否定的評価を補強する行動をしているところから、有機体全体を本質的に大切にし、自己概念が前向きになっていくにつれ行動も変わり、自分自身の知覚が改善していく、という流れをとる。

きわめて重要なことは、クライエントが一致した状態になる能力を強化することであり、それによってクライエント自身に、経験に開かれた多くの情報を取り込めるような変化をもたらすことである。さらに、それによって選択の拠り所が自己の内側になり、クライエントは自らの方向を決め、自分に力を与えられるようになることである。
 

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臨床心理学特論 025 クライエント中心療法 ロジャーズの生立ち

■ 臨床心理学特論 025 クライエント中心療法 ロジャーズの生立ち ■

▼ 1: ロジャーズの生い立ち

※ロジャーズにとってクライエント中心療法(あるいはその考えや理論体系)は、自分が最も必要としたものであると私は思う。

▼ 2: 1914年-
ロジャーズ家は大農園に引越し、都会生活の誘惑から遠ざかる。両親共に17世紀大西洋に渡り、300年以上にわたって新しい国家の発展に力を尽くしてきた家系の出。

1902年-
1月8日、カール・ロジャーズ誕生。6人兄弟の4番目。兄弟の5人が男の子。家族については、強い絆で結ばれていたが厳格な宗教的倫理的雰囲気に満ちていた、と語っている。

ロジャーズは愛されていたが、家の基本仮説は神に選ばれたものとしてふさわしく振る舞わなければならない、というものであり、アルコールどころか、劇場に行ったり、カード遊びも禁止されていた。

高校時代に2回しかデート出来なかったことは、とても後悔していると。

ロジャーズは、家族の伝統に従い、ウィシコンシン大学の科学農業分野に進学。ここで初めて家族以外の同世代の若者たちと親密な関係をもち、新しい世界が開けていく。そして、この知的エネルギーと情緒的エネルギーの高まりは、キリスト教への献身を導き出す。そんな中、ロジャーズは中国北京で開かれる世界学生キリスト教会議のアメリカ代表の1人に選出される。

この半年にもわたる旅は、ロジャーズの知的・スピリチュアルな成長において大きな分岐点となる。

1922年-
10月9日に婚約。

ロジャーズは「恍惚とするほど幸せだった」と述べている。

両者とも両親の反対を踏み切っての結婚であった。そしてロジャーズは、当時最もリベラルなことで知られていたニューヨークのユニオン神大学に入学。

1年生の時、20分以上も説教することに、何か気の進まないものを感じる。2年になるとますます神学に落ち着いて取り組むことが出来なくなり、近くにあったコロンビア大学の講義を聴講し始める。そこで臨床心理学に出会い、コロンビア大学教育学部の正規学生となる。

この年、初めての子どもディビッドが誕生する。ロジャーズ夫妻はワトソン流の行動主義に従ってこの子を育てようとしたが、子育てが上手にいったのは、妻が良き母だったからとロジャーズは言っている。

▼ 3: 1926年-
ロジャーズは、コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジ大学院在学中ニューヨーク市児童相談所の研修員になる。当時ティーチャーズ・カレッジは、測定・統計重視のソーンダイク全盛にも関わらず、児童相談所は感情・人格力動重視の折衷的フロイト派だったため悩む。しかし、ロジャーズは両方から学べるものを学んでいく。

1928年-
ニューヨーク州ロチェスター児童虐待防止協会児童部勤務。ロジャーズは処遇面接の効果的方法を模索し、オットー・ランクの治療理論に好意を示す。オットー・ランクの治療理論とは、現在の治療関係の中で患者の洞察と自己受容に焦点を当て、患者の積極的な意思の支持者となろうとする理論。

その後、フィラデルフィアグループ(ジェーシー・タフト、フレデリック・アレンなど)のクライエントの能力に信頼をおく立場に多くの影響を受ける。

この時ロジャーズは、

1.フロイトの無意識については高く評価したが、後継者達が理論をドグマ化したり、治療者を権威的位置におくことに批判的

2.行動主義が人間を対象化(もの化)しエリート支配の理論を背景にもっていることに批判的

当時の諸権威者の理論は現実を理解するのに合わないと感じる。さらに数年後には、クライエントの行動を解釈することは、臨床的にあまり有効ではないと考えるようになった。

ある家庭内暴力を起こす少年の母子面接において、問題の原因をどれだけ説明しても洞察が進まないのにも関わらず、母親と本格的にカウンセリングをすることにより少年の問題が解決していくことを経験する。

その結果、「どの方向に行くべきか、何に傷つきどんな問題があり、どんな経験が隠されているかを知っているのはクライエントだけである」と学んだという。

▼ 4: 1940年-
「カウンセリングと心理療法における新旧両見地」発表。

個人が自己理解を深め、本人自身が主体性を持って自己選択する新しい立場としてノンディレクティブ・アプローチ(非支持的アプローチ)を公表。これが事実上のクライエント中心療法のはじまりである。その後、この見解は「非指示」と「指示」の論争となる。

1951年-
「ノンディレクティブ・アプローチ」という言葉は、“技法“として受け取られやすいとして「クライエント中心療法」と公唱。「クライエント中心」と称することにより、クライエントの自己成長力に対する全面的信頼の態度が基本哲学であると明言する。

※「クライエント中心療法」という言葉は1942年に登場していたが、このように意識して使用されてはいない。この時の「クライエント中心療法」は”感情の反射“、”感情の明瞭化“など技法重視とされやすい面を有したもの。

1957年-
「心理療法によるパーソナリティ変化をもたらす必要にして十分な条件」により明確化。

心理療法による人格の変化・成長は、技法によってというよりは治療者とクライエントの間に起こる基本的なある種の関係の質によって起こるものとする。

つまり、3つの態度条件をクライエントが認知するときに起こるとした。
 

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臨床心理学特論 024 新フロイト派 E.フロム

■ 臨床心理学特論 024 新フロイト派 E.フロム ■

アメリカの精神分析学者。ドイツの裕福なユダヤ人家庭に生まれる。1933年、ナチスの台頭とともに、アメリカに亡命し、ホーナイ、サリバンらの新フロイト派に参加した。

フロムは社会学的な基礎の上に精神分析理論を捉えようとし、個人の内的世界だけでなく、その人々が実際に生きている社会のあり方や歴史に視点を向けた。未分化な一体性への欲求と独立への欲求の葛藤を人間に固有なものだと考え、その解決様式を文化的歴史的文脈の中で捉えようとした。

自著『人間における自由』において、フロイトとの相違点を「生活の基本的地盤が様々のタイプのリビドー組織にあるのではなく、世界に対する人間の特殊な関係の仕方にある」とし、非生産的な構えとして、

 1.受容的構え
 2.搾取的構え
 3.貯蓄的構え
 4.市場的構え

をあげた。この4つと、生産的な構えを含めて5種類の性格類型を考え、これらは「ある1つの社会集団、構成員が持つ共同の基本的経験と生活様式を基に発達した性格」である社会的性格にも当てはまるとし、正気で健康的な人間が育つのは、人間主義的な共同社会主義によった場合のみであるとした。
 

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臨床心理学特論 023 新フロイト派 サリバン

■ 臨床心理学特論 023 新フロイト派 サリバン ■

▼ 1: サリバン
アイルランド系のアメリカの精神科医。幼少期は貧しく周囲の人間関係にも恵まれず、青年期には精神病院に入院する。サリバン自身も、若い頃には経過の良い統合失調症を経験したと述べている。

医学を修めた後、重症の統合失調症に対する集中的精神療法を試み、その成功によって内外から名声を得た。その頃、みずからの生活体験と臨床体験を起訴に、方法論としての「関与しながらの観察」を打ち出し、対人関係論をベースにした精神医学を築くことになる。

サリバンは、行動を飲食・性などの「満足欲求」と他者との関係における安定の追及、「対人安全保障感」に2分し、後者を重視する立場にたつ。

治療の目標は、自己の拡張と並んで新しい対人関係の実践におかれ、その過程は他者に近づく際の患者の特徴的な型を明らかにするところにある。治療者は患者の言葉や動作から、その伝えようと、また隠そうとしていることを感じ取り、それを伝え返して両者の間で合意的な確認を重ねていく。

幼児は、重要な他者との間に安定をもたらす面に意識を注ぎ、それと相容れない面を意識から分離して、自己態勢を形成する。自己態勢は新しい状況が生じた際、不安(安定感の喪失の恐れ)が働いて、その認知を妨げるよう作用するため変化しにくい。

このように「安定への欲求-緊張-不安-安定化作業」という軸を用いて人間の行動様式をとらえた。この不安は治療場面でも作用し、合意的確認の過程を妨げる。患者はしばらくの間、治療者にどう思われるかを不安に感じひそかに打診を繰り返すが、やがて信頼感が生まれると、不安に対する許容度が増す。

最初の洞察は、普通治療者像をめぐって生じ、自分と相手との間に現在起こっている過程を、過去の状況に基づいて歪めて認知していたことに気づく。これには多大の困惑と不安が伴うが、以後患者は治療場面で自由になり、重要な体験を生き生きと思い出して包括的な洞察に至る。

分離していた面をこうして再結合する自己の拡張は、他者に対して行動しているありのままの自分を知ることでもある。
 

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臨床心理学特論 022 新フロイト派 ホーナイ

■ 臨床心理学特論 022 新フロイト派 ホーナイ ■

▼ 1: ホーナイ
フロイトの理論が、生物学的・二元論的・機械論的で、社会的文化的要因が考慮されていないという見地に立つ。理論の中核は、

「敵意に満ちた外界に囲まれて、自分が孤独で無力である」

という幼児の感情である基底不安(basic anxiety)である。そして、基底不安に対する対応様式を人間の行動様式と仮定した。

基底不安は、両親との関係において子どもの安全観を脅かす様々な要因によって引き起こされる。子どもは基底不安から自分の身を守ろうとして、敵対的になったり服従的になったりと様々に試みるが、次第に過度に依存的になるか、孤立してしまうか、攻撃し競争的になるかという態度に固定し、神経症的な性格の形成につながる。

しかし、これは絶対的な関係ではなく、以後の経験によって基底不安から救われる可能性も考えられる。

晩年には、神経症を「真の自己」と、過度に理想化され現実離れした自己像と同一化された「理想化された自己」との葛藤であると考えた。そして、分析治療は「真の自己」が建設的な成長をする機会を得て「自己実現」へと向うのを助力することだという立場に立っている。
 

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臨床心理学特論 021 新フロイト派

■ 臨床心理学特論 021 新フロイト派 ■

▼ 1: 新フロイト派
精神分析諸学派の中でフロイトに対して最も批判的な立場をとる。フロイトの理論体系のうち、

 ・幼児性欲論
 ・生物学的還元論

を否定し、

 ・現実状況の困難の分析
 ・自我機能
 ・個人の精神に与える社会文化の影響

を重視した学派。

従って、治療態度は個人の自己決定と自己実現を重視し、解釈と共に支持的・受容的な態度で接することも多く、時として現実の生活に支持的介入することも辞さない。
 

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臨床心理学特論 020 対象関係論 ウィニコット

■ 臨床心理学特論 020 対象関係論 ■

▼ 1: ウィニコット
精神分析の立場に立つイギリスの児童精神科医。

生涯に6万例を超える子どもとその家族に接したといわれ、「赤ちゃんというものはいない」という有名な言葉を残した。それに代表されるように、乳幼児とその主なる養育者との関係(対象関係)を重視し、乳児の内的世界とその養育的環境(母親の傾倒的な養育のあり方)とを橋渡しするための独自の考えを表現した。

ウィニコットは、自己の乳幼児期の母子関係の理論を、フロイトによるエディプス・コンプレックス(生後2年以上)、つまり父、母、子の三者関係の世界、クラインにおける抑うつポジション(生後6ヶ月から2年)、つまり母と子の二者関係の世界に対して、一者関係及び一者関係から二者関係への移行期の世界を解明するものとして位置づけている。

ウィニコットは抑うつポジションに関するクラインの研究を最重視し、それとともに一者関係から二者関係への移行については、フロイトのリビドー発達論やクラインの内的対象関係論の観点だけでは不十分であるとし、むしろ母子関係の基本を依存として捉えた。

□ 1.絶対的依存期 →相対的依存期 →独立へ
幼児は、はじめのうち、幼児が乳を欲しいと思った時、母親が直接的にそれを察知し、口元に乳房をもっていくなどして、乳児のニーズに100%適応する。

すると乳児は、乳房が自分の一部であるという錯覚、ないしは自分が創造したものという錯覚を持つ機会が与えられたことになる(絶対的依存期)。

次の段階の課題は、その錯覚から抜け出すこと(脱錯覚)である。これは乳児が許容できる範囲の母親の適応失敗を通して、つまり対象の破壊と再創造を通じて行なわれる。この過程では移行対象(母親からの分離時に幼児が持つ毛布やぬいぐるみなど、最初の「自分の一部ではない」所有物)が重要な役割を果たす。

こうした本能活動の行なわれる周辺に安全基地があって、そこで壊れ欠けた自己や対象像が再生・発展を繰り返し、確固とした姿かたちをとるようになる。従って、移行対象は対象の破壊に伴う対象喪失不安、つまり抑うつ不安に対する防衛としての役割を演じるとともに、自己実現の場所としても重要である。

□ 2.治療論
ウィニコットは、「偽りの自己が優勢なとき本当の自己と交流するためには、分析家はまず、患者の内在化された環境の重荷を肩代わりする状況をつくってやる。つまり、患者が深く依存的で未熟な幼児そのものになれる状況をつくってやることが必要である。そしてはじめて分析家は本当の自己を分析できるのである」と述べている。

そのため早期の幼児のごとく、依存への退行を促進するような治療場面を設定しなければならない。
 

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臨床心理学特論 019 対象関係論 メラニー・クライン

■ 臨床心理学特論 019 対象関係論 メラニー・クライン ■

▼ 1: メラニー・クライン
カール・アブラハムが口唇サディズムに関する論文を発表したのに影響を受けて、フロイトの「快楽原則の彼岸」において、幼児が母親にアンビバレントな感情を抱くようになること、そしてその矛盾する感情を幼児自身が処理しなければならなくなることを認めるようになった。

その線にそって対象関係論を発展させたのがクラインである。

クラインは、児童にはまだ成人のような言語能力が備わっていないことから、自由連想法は用いず、児童の遊びを介入して治療者との交流を図る遊戯療法を行なった。

子供が遊具を使用する遊びには、成人における自由連想法にも匹敵する内容がみられることを見出し、それが治療実践の中で活躍する道を開いた。

□ 1.早期エディプス・コンプレックス
エディプス・コンプレックスは、エディプス期(4~5歳)に生じるというのが精神分析の一般的な考え方である。

しかし、クラインは離乳期、つまり口唇期にすでに両親の間のつながりに気づき、それに対する精神力動を働かせることを見出した。

また対象を「良い対象」と「悪い対象」とに分裂(splitting)させ、良い対象を自分に取り入れ、悪い対象を外界に排出するという投影性同一視など原始的防衛機制論を展開した。

 ・「良い対象」
 ・「悪い対象」

□ 2.妄想・分裂ポジションと抑うつポジション
クラインは、フロイトの人格発達理論のように一定の時期を過ぎると終わってしまう一過性のものではなく、一生存在し続ける精神のあり方ないし、構えであることを強調するため態勢(position・ポジション)という言葉を用いた。

1.妄想・分裂ポジション
妄想・分裂ポジションでは、外界の対象がまだ全体として1つであると認識されず、部分対象としてしか認識されない状態である。

幼児は暖かい母乳を与えてくれるときの乳房(良い理想的な対象)と、欲求不満を与えるときの悪い乳房(悪い迫害的な対象)という2つの対象を持つことになる。このポジションにいるときには、迫害的な対象が自分自身、あるいは迫害的な対象を攻撃し、破壊するのではないかという不安が強い。

2.抑うつポジション
妄想・分裂ポジションの後、全体的な対象関係が形成されるようになる。それと同時に乳児は正の本能と死の本能、愛と憎、創造性と破壊性の両面が共に自分自身のものであることを認識するようになり、双方の間にあって両価性に悩むようになる。

また、自分自身の攻撃性が、自分にとって大切な良い対象を破壊してしまったのではないかという不安に悩むようになる。この不安は苦痛なものであり、罪悪感や喪失感を生ずる。

このように、不安が支配的な態勢を抑うつポジションとした。これらは主に、生後半年から1年以内に体験されるものであるという。

□ 3.妄想・分裂ポジションと抑うつポジション
1.妄想・分裂ポジション
 投影性同一化 :排泄
 空想 :万能感(空想が現実になるという意味での)
 防衛 :原始的(スプリッティングなど)

 対象関係 :自己愛的
 象徴 :象徴等値(シンボルとしての機能なし)
 同一化 :両親のカップル内
 死の本能 :切望

2.抑うつポジション
 投影性同一化 :共感
 空想 :現実的
 防衛 :神経症的

 対象関係 :現実検討された同一化(思いやることが出来る)
 象徴 :象徴形成
 同一化 :カップルの証人
 死の本能 :嫉妬・競争心

□ 4.精神病の原因
罪悪感に耐えられない場合、妄想・分裂ポジションに退行してしまい、精神分裂病の原因となる。また、良くうつ不安を打ち消すための防衛が強すぎれば、躁うつ病と引き起こす原因となる。

□ 5.クライン派の分析
分析は、生後1年間で経験される葛藤や不安を徹底的に分析しなければならない。分析の間、精神分析医は理想化されたり、迫害者とみなされたりするが、転移の解釈は治療に不可欠であり、特に陰性転移の分析が重要となる。

過去の現実や空想を発見するためには、転移状況をその深層まで分析する必要があり、何度も何度も後の体験に早期の体験を関連付けることで、不安と罪悪感が減少し、自我が強くなって統合性を増す。

□ 6.クライン派と自我心理学の相違

1.クライン派(メラニー・クライン)
子ども観
 ・幼児早期から心的な構造は確立

精神分析
 ・分析技法の維持(大人の治療と全く同じ)
  1.プレイセラピー(遊戯療法)
  2.自由連想法の厳密な適応
  3.治療者は中立・受動的存在
  4.早期エディプス・コンプレックス

治療
 ・子どもの空想を重視し、環境<素因
 ・現実的適応・教育<心的発達

2.アンナ・フロイト
子ども観
 ・親に依存、保護されるべき存在

精神分析
 ・分析技法の修正(子どもに適応をという意味での修正)
  1.準備期・陽性転移(仲良くなる)の確立
  2.自我支持
  3.支持・教育・プレイの誘導
  4.エディプス・コンプレックス(超自我の存在が重要)

治療
 ・両親の養育機能の重視、環境>素因
 ・現実的適応・教育>心的発達

※このクライン派と自我心理学(アンナ・フロイト)の相違は、環境に恵まれず母乳で育てられていない駄馬「メラニー・クライン」と、父親がフロイトで環境的に非常に恵まれた心理界のサラブレット「アンナ・フロイト」の違いであるといえる。
 

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臨床心理学特論 018 対象関係論

■ 臨床心理学特論 018 対象関係論 ■

▼ 1: 対象関係論
フロイトの精神分析では、エスと超自我を自我がどのように調停していくかというように、問題は常に個体内部で考えた。対象が重要な他者である場合においても、それは個体のリビドーがそこに向けられる対象という扱いでしかない。

ところが幼児や成人期の境界例や精神病をみていると、幼児時代のイメージや表象の段階のままにとどまっており、健康な超自我といえるほどの発達をしていないことがわかる。

そうしたことから、取り入れられた外界要因(親その他のイメージ、表象、さらには超自我)の有様を情緒的に追及していく学問領域が生まれた。

そのため対象関係理論とは、フロイトの生物学的リビドー発達論とは異なり、人間の精神生活の親子関係の中で生活発展させていくものとして捉え理解していこうとする学問的立場といえる。

※フロイトは心理=性的発達理論をみるとわかるように、自我の発達において「親」(重要な他者)という要因を重視することはなかった。しかし、次に登場するメラニー・クラインは早期の親子関係を非常に重視し、そこに多くの問題の原因があると仮定した。

この違いはどこから来るのか。おそらくフロイトがめぐまれた親子関係を結んで育てられたこと、そしてメラニー・クラインが不幸な生い立ちをたどってきたことに帰属すると考えられる。

人は恋人とうまくいっているときは、何も考えない。何がうまくいく原因なのかは考えない。しかし、フラれると態度は一変し「何故だ! 何が問題だ!」と考えるようになる。人はうまくいっているときは何も考えないが、うまくいかなくなると考える。上記のフロイト理論とメラニー・クラインの理論の相違も同じである。
 

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臨床心理学特論 017 自己心理学 コフート.H

■ 臨床心理学特論 017 コフート.H ■

▼ 1: コフート.H
コフートを有名にしたのは、自己愛論によってである。フロイトは自体愛から対象愛へという自我の発達理論において、自己愛は否定的な退行的意味合いでしか受け止められることはなかった。

これに対し、コフートは自己愛がそれ自体独特の発達の筋道を持つと考える。コフートの理論は、双極自己と自己対象というと独特の概念から構成されている。

 ・双極自己
 ・自己対象

□ 1: 自己愛性人格障害
コフートの自己心理学が問題にしていたのは、自己の病理、自己愛性人格障害である。コフートによれば、自己愛性人格障害は、自己の構造における欠陥とこの欠陥に対する防衛構造が問題となっており、その改善は分析家の共感的反応によってもたらされる。

従来の精神分析では、共感的反応は分析の中立性を損なうものであるが、自己の病理は親の共感的反応の不足が関わっているものであり、治療においても共感的反応が重要となる。

□ 2: 共感的反応とは
子供は母親が自分の欲求に波長を合わせてくれることを予期しており、不安や欲求に対して母親が共感的に反応すれば、母親との融合を体験する中で次第に不安は消失する。

この時、母親は自己の一部として体験される。これを「自己対象(自己のような対象)」という。

2歳から4歳にかけて、母親の共感的利反応を通して愛される自己を求める「野心」ができ、4歳から6歳にかけて両親のいずれかを見本として、自己の「理想」が出来る。

この「野心(誇大自己)」と「理想(理想化された両親像)」を双極自己という。共感的な自己対象との融合を通して、「野心」と「理想」ができ、自己を形成する。

□ 3: 治療論
コフートは、自己愛性人格障害などの人格障害は、その発達過程で共感的な対応が得られなかった場合に、双極自己と自己対象との関係が歪むことによって生じるものと考えた。

従って、自己愛性人格障害の治療においては、まず分析家が親(自己対象)のように共感的に対応することで転移を生じさせることからはじまる。転移が起きれば、分析家の中の不安を緩和する側面、遅延に耐える側面などが、クライエントの心理的構造に取り入れられる。つまり、クライエントを直すのは解釈による洞察ではなく、幼少期に必要であった共感性を再体験することにある。

自己愛性人格障害の場合、分析家が感情を抑制したり黙っていたりすれば、それはクライエントの幼少期における親の反応を反復してしまうため、分析家の人間的暖かさは分析過程にとって必要条件である。
 

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臨床心理学特論 016 自己心理学

■ 臨床心理学特論 016 自己心理学 ■

▼ 1: 自己心理学について
コフートは、フロイトの影響を強く受けた精神分析家である。初期には正統精神分析を徹底していたが、後に独自のコフート理論(自己心理学)を展開していく。

※現在の精神分析は主にこの自己心理学。
 

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臨床心理学特論 015 自我心理学 E.F.エリクソン

■ 臨床心理学特論 015 自我心理学 E.F.エリクソン ■

▼ 1: E.H.エリクソン
アメリカの精神分析学者。ユダヤ系ドイツ人として生まれ、アンナ・フロイトに指導を受け児童精神分析を学ぶ。その後、ナチスのユダヤ人迫害を受けアメリカに亡命。

エリクソンはハルトマンの自律的な働きの中で、人の心理・社会的は発達に注目した。

自我の自律的発達が対象関係と愛情交流によって可能になるという事実に着目し、それらの観点からライフ・サイクルの8つの年代における発達課題、発達図式を提出した。この理論は、パーソナリティ発達理論に対し3つの主要な貢献をしている。

第1は、フロイトの心理-性的発達段階と平行させて、自我発達の心理社会的段階を識別したことである。これらの段階を通して、ひとは自分自身や社会の中で他者に対する新しい関係性を確立していく。

第2は、パーソナリティ発達を、フロイトのように幼児期段階で確立するとみなすのではなく、生涯の全段階を通じて続くものとみなしたことである。

第3は、各段階では新しい水準の社会的相互作用が必要となり、それによってパーソナリティ発達が生の方向へも負の方向へも変化しうると考えたことである。

エリクソンは、8つの心理-社会的発達段階を識別して、幼児期から老年期に渡る人の一生涯を描写した。それぞれの段階では、特定の葛藤が焦点となる。この葛藤は一度限りで解決されるものではないが、完全に解決しておかなければ後の段階で葛藤をうまく処理できないことになる。

▼ 2: エリクソンの発達理論

□ 1.信頼 対 不信(生後1年目)
受けた養育の質によって幼児は、環境を信頼し、それを秩序ある予測可能なものとみなすことを学習したり、逆に混沌とした予測不可能なものとして疑い、恐れ、不信感をいだくことを学習する。

重要な対人関係: 母および母性的人間
心理・性的段階: 口唇期

□ 2.自律性 対 恥・疑惑感(生後2~3年目)
運動能力・精神能力の発達や、探求や操作をする機会から、自律・適応・自己統制の感覚が出現。過度に批判したり、行動を制限すると、猜疑心や疑惑の感覚を生み出させることになる。

重要な対人関係: 長身的人間
心理・性的段階: 肛門期

□ 3.自発性 対 罪悪感(生後4~5年目)
子供の自発的な知的活動や運動活動に、両親がどのように対するかによって、自由や自発性の感覚が生じたり、逆に罪悪感や大人の世界へのバカげた侵入者といった感覚が生じる。

重要な対人関係: 核家族人間
心理・性的段階: エディプス期

□ 4.勤勉性 対 劣等感(生後6~11年目)
物事がどのように働き、操作されなければならないのかということに感心を持ち、規則、体制化、秩序化などの勤勉性が生まれる。しかし、結果がついてこないと劣等感が出てくることもある。

重要な対人関係: 近隣、学校内の人間
心理・性的段階: 潜伏期

□ 5.アイデンティティ 対 アイデンティティ拡散(青年期、12~18歳)
この時期、物事に対してさまざまな見方をするようになり、他者の観点から物事を見ることが出来るようになる。さらに、さまざまな役割を演じつつ他者と異なる一貫した、そして受容できる自分自身のアイデンティティという統合された感覚を発達させる。

「自分は何者か」、「自分の目指す道は何か」、「自分の人生の目的は何か」、「自分の存在意義は何か」など、自己を社会の中に位置づける問いに対し、肯定的かつ確信的に回答できることがアイデンティティの確立を示す重要な要素である。この逆がアイデンティティの拡散であり、これは自己が混乱し、自己の社会的地付けを身内なった状態を意味する。「負の同一性」―「スピード狂」とか「暴れ者」とかいった社会的に受容されない役割―を作り上げることになる。

重要な対人関係: 仲間グループ、リーダーシップモデル
心理・性的段階: 青年期

□ 6.親密感 対 孤独(青年期前期)
他者と接触しようとすることによって、親密感(他者に対する性的、情緒的、道徳的なコミットメント)が生じたり、親密な人間関係から孤独感が生じたりする。

重要な対人関係: 友情における相手意識、異性、競争・協力相手
心理・性的段階: 性器期

□ 7.世代性 対 停滞(成年期)
この段階では生活経験の関心が、自分自身から家族や社会、次世代へと広がっていく。このような将来への志向が発達しないと、自分の物的所有や身体的健康のことだけに関心を持つようになる。

重要な対人関係: 家族
心理・性的段階: 性器期

□ 8.統合性 対 絶望(老年期)
この生涯最後の段階で、今までの全てを振り返り、未知なる死を思う。それまでの各段階で行なった結果として、統合性をもって楽しむことが出来る。しかし、生涯が不満足で誤ったものであったことを見出す人が直面するのは絶望である。そのような人は、怒りをもって振り返るにも、希望を持って前を見るのにも遅すぎ、一生を切望のすすり泣きで終える。

重要な対人関係: 人類、私のようなもの
心理・性的段階: 性器期

これら8段階の危機をうまく乗り越える(「対」で結ばれた前者が後者を相対的に上まわる形で獲得される)ことが、健全な人格形成につながる。

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臨床心理学特論 014 自我心理学 H.ハルトマン

■ 臨床心理学特論 014 自我心理学 H.ハルトマン ■

▼ 1: H.ハルトマン
フロイトの生物学的心理学を継承し、発達適応論に発展させ、体系化させた人物。

自我はエスから発達するものとは考えず、自我もエスも未分化ながら生得的に存在するとし、自我をエスに従うような弱い存在ではなく自律性をもっている存在とした。

自我の自律的な働きは以下の2つ。

・「一次的自律性」
・「二次的自律性」

一次的自律性とは、生まれたときから備わっている潜在力や能力を示す自我の諸機能である。二次的自律性とは、発達過程において外的環境とのかかわりによって生じる葛藤に対処し、適応するための自我の働きである。

自我は、一次的自律性の発達と関係付けられることで、さまざまな葛藤、内的衝動を安定させ、適応状態に持っていく「中和の過程」をたどる。

つまり、外的および内的な環境に適応するための自我の諸機能の発達は、生物学的基礎を持ち、その生物学的な成熟を基礎にして心理的発達もはじめて可能になると考えた。

▼ 2:まとめ
一次的自律性:潜在的な自我の力
二次的自律性:環境に適応するための自我の働き

自我+一次的自律性の発達=適応状態(中和の過程)

次の順番をたどる
1.生物学的基礎
2.外的および内的な環境に適応
3.生物学的な成熟
4.心理的発達が可能に
 

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臨床心理学特論 013 自我心理学 アンナ・フロイト

■ 臨床心理学特論 013 自我心理学 アンナ・フロイト ■

▼ 1: アンナ・フロイト
フロイトの末娘。

最初は教育者だったが、フロイトの影響を受け、精神分析に児童分析という新分野を開拓する一方、フロイトとともに精神分析理論の発展に大きく貢献した。アンナ・フロイトは、子供に対する精神分析を実践するなかから、防衛機制を整理し、自我発達に伴い防衛機制も発達することを明らかにした。

児童分析においては、児童には病気に対する洞察や治療を受けようとする

 ・「自発的な決心」
 ・「治療への意思」

が欠けているとし導入期の必要性を述べ、そこでの準備を通してクライエントの間に

 ・「感情的な信頼-依存関係」

を樹立するとした。

転移についてアンナ・フロイトは、陽性転移は児童分析のあらゆる操作に不可欠な前提条件であり、その一方で陰性転移は治療者にとって妨害的に働くため緩和・除去されるものと考えた。

分析期間中、治療者はクライエントの「自我理想」の位置に自分を立たせるべきであり、そして禁止排除、直接的満足の程度、昇華の道を学習せねばならない。

▼ 2: アンナ・フロイトの功績
アンナ・フロイトの精神分析における功績は、次の2点にもとめることができる。

第1は、それまで精神分析治療が成人に限られていたのに対し、子供に適応する道を切り開いたことである。アンナ・フロイトは、子供は自由な遊びで「語るもの」であり、それを解釈することにより成人と同じような精神分析が可能であると立場をうちだした。

第2は、精神分析的自我心理学の確立に大きく貢献したことである。防衛機制を自我機能の発達的観点から理論的に整理・体系化することで、精神分析をより精巧なものにする一方でハルトマンと伴に自我心理学の発展の基礎を形作った。
 

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臨床心理学特論 012 自我心理学

■ 臨床心理学特論 012 自我心理学 ■

▼ 1: 自我心理学について(フロイト以後の精神分析)
Ego psychologyと呼ばれるのがこの系統。フロイトは晩年に近づくに従い、エスや超自我に対する主体的な自我の機能を重視するようになったが、自我の力は弱く、その独立性を確保したとはいえない。しかし、自我の役割軽視に対する批判に応じるべく、正統フロイト派の中に生じた自我を中心として人間を理解していこうとするひとつの流れが自我心理学である。

自我が当初からエスとは独立した自立性を備えたものと考え、その積極的な適応の機能に注目し、自我に中心的な役割を与えた。人間に対するフロイトの生物学的立場に対して、目的思考的社会存在として人間を見る。
 

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臨床心理学特論 011 精神分析の歴史的変遷

■ 臨床心理学特論 011 精神分析の歴史的変遷 ■

▼ 精神分析の流れ

フロイトの精神分析

大論争! アンナ・フロイトとクラインの論争。
これを発端に精神分析は、自我心理学と英国独立派(中間派)とクライン派の3つに分かれる

フロイトの精神分析
→自我心理学(アンナ・フロイト) →自我心理学・乳幼児精神医学
→英国独立派
→クライン派

▼ 1つ目の流れ・自我心理学(A・フロイト派)
アンナ・フロイトやマーガレット・マーラーが有名。
→自己心理学(コフート)
→乳幼児精神医学

▼ 2つ目の流れ・英独立派(中間派)
ウイニコットやボウルビィが有名。アンナ・フロイトとクラインの論争では、どっちつかずを保った一派。

▼ 3つ目の流れ・クライン派
メラニー・クライン、シーガル、ビオンが有名。ちなみに英独立派とクライン派を合わせたものが対象関係論。

▼ その他の流れ・新フロイト派(反フロイト的流れ)
ホーナイ、サリバンが有名。
 

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臨床心理学特論 010 精神分析療法

■ 臨床心理学特論 010 精神分析療法 ■

▼ 4: 治療技法
主なものは、直面化、明確化、解釈、徹底操作の4つ。

1つ目の直面化とは、本人が否認し、目を背けている心的現実や本当の意味づけを指摘し、現実検討を促す介入。直面化することにより、無意識を意識化させる作業(解釈)をより円滑に行なうことが可能となる。

2つ目の明確化とは、クライエントが面接の流れの中で語っていながら、自分では気づいていない潜在的な情緒や葛藤を治療者が言葉によって伝え返す介入。

3つ目の解釈とは、クライエントが以前は意識していなかった心の内容やあり方について納得し、それを意識させるために行なう言語的な理解の提示あるいは説明。精神分析療法の中核にある。解釈内容は、顕在内容から潜在内容への翻訳や、防衛、転移などが主なものである。

4つ目の徹底操作とは、クライエントに解釈を根付かせ、解釈が引き起こした抵抗を克服できるようにする介入である。本質的には自我への操作であり、自我にその抵抗や葛藤に直面化させ、クライエントがそのことに気づき、いつもそれらを発見できるようにさせる。それにより繰り返し起こる抵抗を克服し、最終的に反復強迫の支配からの脱却を目指す。しかし、クライエントの中に長年続いている精神構造だけに、ただちに変化させることは難しい。

▼ 5: 治療の終結
フロイトは治療終結の条件として、次の2つを述べている。1つ目は、クライエントが症状に苦しまなくなり、不安も障害も克服したというとき。2つ目は、クライエントにとって問題となっている病的現象が今後繰り返し起こる可能性がほとんどないこと。抑圧されていたものが意識化され、理解し得なかったものが解明され、内的抵抗が取り除かれたと治療者が判断したときである。

終結における注意点
終結の日付は、治療者とクライエントの同意の上で確実な一日が明確に選ばれるべきである。そしていったん終結が決まったら、これまで話し合った問題以外の問題にはふれない。クライエントは終結の前後に、現実に治療者を失う対象喪失を幻想と現実のレベルで体験する。終結の際には行動化の問題がある。治療をやめる不安のために対人関係が悪くなったり、別の治療者を探し始めたりする。このことについても良く話し合う必要がある。
 

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臨床心理学特論 009 精神分析療法

■ 臨床心理学特論 009 精神分析療法 ■

▼ 4: 面接中に起こること
主なものは治療的退行、抵抗、転移・逆転移の3つ。

□ 1: 治療的退行

1つ目の治療的退行(therapeutic regression)とは、精神分析の過程で治療力動の関わりにおいて起こる退行現象のことである。クライエントが幼児的になり、これが後に反転して治療的成熟につながる現象で、欲求不満に直面したとき過去の発達段階に戻り、その段階で満足を得る退行とは区別される。なお、退行はその最中のカタルシスなどにより治療効果をもたらすことがあり、退行こそが治療の目的となるような見解もある。

退行がなぜ起こるのか。

1.統制された欲求不満状態。
2.神経症の状態自体が退行を起こす要因
3.見せかけの正常性を保つ必要がない。
4.自由連想の場では日常生活や社会生活での規範を捨てることが奨励される。
5.上記の分析状況に適応するにつれ、意識的・論理的・社会的な二次課程から無意識的・本能的・衝動的な一次過程に変化し、幼児期状況の対人関係や病的固着および病的体験の想起が出現することにより退行が現れてくる。
6.治療期間の明確な制限がない。

などが挙げられる。この中では、特に「1.統制された欲求不満状態」が重要である。治療者には精神分析療法の本質的な力動が効果を挙げることができる程度の統制された、一定の欲求不満状態を保つことが求められる。

1.クライエントの動機・・・病気を治したい →治療者に理解されたい

2.治療者の禁欲原則にのっとった対応
(過剰な配慮、助力、忠告を差し控える沈黙、傾聴)

3.クライエントは欲求不満状態になり、欲求不満が高まる

4.クライエントはさまざまな対応の仕方で治療者に取り入ろうとする
(例:悪いことをしたという告白、受身的女性的態度、治療者との競争関係)

5.抵抗、転移に

□ 2: 抵抗

精神分析の治療過程で見られる現象で、クライエントは自己理解を深め、自分の神経症的問題を解決するために分析を求めているのにも関わらず、さまざまな手段で治療の進展を阻むことを抵抗という。指示に従わない、何も話すことはないという、議論をしようとする、治療者を喜ばせるような話ばかりする、眠るなどのように態度や言葉、行為に示される。

精神分析治療の治療機序は、症状の意味を含んでいる無意識的過程を意識化させることにあり、それにはさまざまな抵抗が伴う。抵抗は治療の妨げにもなるが、同時に役に立つものであり、抵抗の分析は転移と並んで分析の本質的なものである。

フロイトは抵抗として、抑圧抵抗、疾病利得抵抗、転移抵抗、エス抵抗、超自我抵抗の5種類を挙げている。

1.抑圧抵抗(自我抵抗)
意識化に対する抵抗で、最も基本的な抵抗。

2.疾病利得抵抗(自我抵抗)
神経症によって得られた満足や安心を捨てることに対する反発で、症状の解消に抵抗する。

3.転移抵抗(自我抵抗)
治療過程の中で最も重要なもので、転移状況で生じる抵抗。

4.エス抵抗
抵抗の分析によって抵抗が意識化され、自我が抵抗を捨てる決心をした後にも、治療者は反復強迫の抵抗にあうため、徹底操作が必要となる。

5.超自我抵抗
無意識的な罪悪感や処罰欲求に根ざしたもので、あらゆる治療の効果に反抗する。治療が成功しそうになると治療の進展を妨げる。

さまざまな抵抗に対して、その原因、目的、様式、歴史を明らかにし、解釈することで克服する作業を抵抗分析と呼ぶ。この抵抗分析は、クライエントが避けている話や、葛藤を理解し、その抵抗をどのような態度や防衛を用いて行なっているか、その抵抗によってどのような葛藤を隠しているのかなどについて、順序だてた解釈によってクライエントにそのことを理解させようとするものである。

□ 3: 転移・逆転移

転移とは、精神分析かがクライエントを治療する際、その治療者とクライエントの関係のうちに、クライエントの幼少期における無意識的願望が現実感を伴って反復体験されることである。フロイトが「ヒステリー研究」(1895)の中ではじめて使用した。転移は、一般的に分析治療の過程で、それまで抑圧されていたものが暴かれそうになった時点で起こりやすい。

1.患者が精神分析療法によって対抗した際、無意識的に治療者に追わせるさまざまな非現実的な役割または同一性および幼児期体験に由来する、この表象への反応(メニンガー)

2.治療同盟を含めるもの(自我心理学)

3.新たな形で乳児期の感情や態度が出現し、分析かという人物に向かうこと(古典的精神分析)

4.「防衛の転移」と「外在化」を含む(アンナ・フロイト)

5.治療者との関係の全ての側面を含む(クライン)

クライエントの向ける転移には、陽性転移と陰性転移がある。治療において一般にクライエントから陽性転移を向けられれば治療者はよい気分となり、反対に陰性転移を向けられれば不快な気分になる。この治療者側の無意識的な反応そのものを逆転移と呼ぶ。

フロイトは当初、逆転移は治療者のクライエントに対する抵抗とみなし、これを乗り越えるために自己分析や教育分析を受けることが必要であるとした。しかし、フロイト以後になると、逆転移は治療に必要不可欠なものであり、治療に有用であると考えられるようになった。特にクライン学派では、逆転移の中にはクライエントが投影同一視によって治療者に投げ入れたものがあると考え、これがコミュニケーションや共感に基礎になると考えた。

※投影同一視
原始的理想化において「良い対象」と「悪い対象」を分割しておく「分裂(splitting)」が起こる。この「悪い対象」を何が何でも認めないのが「万能的否認」、そして「良い」対象イメージをその現実の対象に貼り付けるのが「投影同一視」である。
 

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臨床心理学特論 008 精神分析療法

■ 臨床心理学特論 008 精神分析療法 ■

▼ 1: 治療契約・治療構造
治療契約とは、治療の開始に当たり治療者と患者との間で治療目標や方法、治療期間、面接のルールなどについてなされる取り決めである。治療契約に規定された治療者と患者の交流様式が、次の治療構造となる。

治療構造とは、治療者と患者の交流を規定する様々な要因と条件が構造化されたものである。治療構造は、治療関係が成立する基本的条件を作り出し、治療関係を支えると共に、治療構造そのものが患者の内面を投影する対象となる。治療条件を目的に沿って構造化し、患者と話し合うことで治療契約が結ばれる。そして、この治療契約を介して心理療法がはじまる。

治療構造は、内面的治療構造と外面的治療構造に2分される。内面的治療構造とは、治療契約・面接のルール、秘密の保持、約束制度、禁欲規則などである。一方、外面的治療構造とは、治療者と患者の組み合わせ(個人精神療法・集団精神療法など)、場面の設定(面接室の大きさ・同席面接)、治療者・患者の空間的配置(対面法、背面法など)、時間的構造(面接回数、面接時間)、治療料金、通院か入院かなどである。

▼ 2: 治療者の基本的態度
治療者の基本的態度は、中立性、受身性、能動性、隠れ身の4つ。

まず1つ目の中立性とは、道徳的な価値規範や忠告を与えず、自由な立場でクライエントの内面と自分らしさを尊重する心のあり方である。クライエントの空想を扱うことを可能にするためには、これを守ることが重要である。

2つ目の受身性とは、クライエントの話に傾聴することを心がけ、直接的な解釈や指示は控えること。そして自らの気づきと改善を見守る態度である。

3つ目の能動性とは、作業同盟を結ぶ時や、治療構造の設定に関する問題を扱う時、解釈を行なう時に能動性を発揮しなければならない。

4つ目の隠れ身とは、クライエントに対して、治療者の個人的な考えや心の内容はもちろん、私生活などプライベートなことを教えないようにするというのが基本的内容である。これはクライエントが自分の中の空想やイメージを投影しやすいようにするため行なわれる。

▼ 3: 治療機序
治療機序は、除反応/煙突掃除(abreaction)→徹底操作(working through)→修正感情体験(corrective emotional experience)の順で行なわれる。

1つ目の除反応/煙突掃除とは、ブロイアーの提唱した概念で、抑圧され無意識になっているかつて体験した苦痛な経験の記憶を復活し、言語などによって表し、過去の情動の緊張を解放することである。つまり、外傷的な出来事の記憶に結びついた情動からクライエントが解放される結果、その情動が病原的でなくなるプロセスといえる。“吐き出して→(発散・洞察の準備段階)”

2つ目の徹底操作とは、フロイトの提唱した概念で、クライエントに解釈を根付かせ、解釈が引き起こした抵抗を克服する心的作業である。“・・・見て→(洞察)”

3つ目の修正感情体験とは、アレキサンダーの提唱した概念で、単に知的な洞察だけでなく情動的な体験をも通して、転移状況とクライエント-治療者関係との間にある相違を認識・体験することである。“そーだったのか・・・→(症状消失)”
 

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臨床心理学特論 007 自我の発達の問題による不適応

■ 臨床心理学特論 007 自我の発達の問題による不適応 ■

1.障害・症状の現われが「対人関係」の影響を受ける。
2.自他の区別があいまいな情緒的怒り。
3.完全(完璧)主義傾向、几帳面、高い理想から来るこだわり。
4.対人関係での自己利得。「いい子」でいると「ご褒美」がもらえる。
5.知的に高い一方で、年齢にそぐわない「主体性の未熟さ(幼児的空想)」。
 

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臨床心理学特論 006 薬物療法と向精神薬

■ 臨床心理学特論 006 薬物療法と向精神薬 ■

▼ 1: 薬物療法と精神障害の治癒
「薬物療法の立場からは、治癒=脳機能異常の正常化」。ただし、その判定を心理学的次元、社会学的次元で判断せざるを得ない。心理学的次元とは、うつ病患者に対して、抗うつ薬を処方し、患者の行動や話を聞くことで病気が治癒したと考えること。また、社会学的次元とは、テストを行い一定の点数なら治ったと考えること。現実には他の要因により症状が消失しないときもある。

いずれにせよ脳機能の異常の程度で、病気を調べることは出来ない。脳レベルで議論することは不可能。

精神的不健康=病気とすれば、病気=脳機能の異常+心因的要素+社会的要素であるといえる。薬物による脳機能の正常化=病気の治療だが、社会的治癒の立場からは治癒≠症状消失。

なお、薬物による脳機能の正常化は、仮定として認められるが、fMRIなどにより証明されたわけではない。もちろん薬物だけで全てを治癒することは出来ない。また、ある症状に対して、薬物を増やしたらよいのか、それとも減らしたらよいのか、どちらがいいのかわかっていない。

▼ 2: 向精神薬の定義と種類
「向精神薬は人の精神に作用する薬物と定義される」。

精神治療薬
□ 1: 抗精神病薬(※狭義の向精神薬)(神経遮断薬、メジャートランキライザー)
大カテゴリーで、患者の数が一番多い。統合失調症の60~70万人が対象。マーケットはデカイ。抗ヒスタミン薬を精製しているときに、たまたま発見された薬。
特徴は、比較的多量でも意識障害を起こさずに幻覚や妄想などの異常体験を軽快させ、病的な精神運動興奮を鎮静される。統合失調症、躁病、妄想を伴ううつ病、非定型精神病などに用いられる。

□ 2: 抗うつ薬(※狭義の向精神薬)
うつ病患者60万人。潜在的には10倍以上。統合失調症の薬物制作の時に発見された。
広くうつ病の治療に用いられる。躁転を起こすときがある。効果発現に2~3週間かかる。多量服薬時の中毒作用が強い。うつ病、良く打つ神経症、強迫神経症、不安神経症、パニック発作などに用いられる。不安にも良く効く。

□ 3: 気分安定薬(抗躁薬)(※狭義の向精神薬)
躁極性障害の対象。必ず飲む。利用頻度は低い。
気分障害の躁病期、うつ病気共に効果があり、再発予防効果を認める。躁うつ病、統合失調症、非定型精神病などに用いられる。

□ 4: 抗不安薬(※狭義の向精神薬)(マイナートランキライザー)
使用するときは多い。
不安や緊張を和らげる。軽度の鎮静・催眠作用、筋弛緩作用、抗けいれん作用を持つ。麻薬のような強い依存ではないが、たばこのような依存が問題。リラックスすることに依存する。心身症、不眠症、神経症、統合失調症、躁うつ病など適応は広い。

□ 5: 精神刺激薬(※狭義の向精神薬)
覚醒度を上げる。ADHD、ナルコレプシー(睡眠障害)の患者に使用する。交感神経作用薬で、脳の上行性網様体賦活系が刺激され、多幸感、交感神経作用とともに連用にて耐性が生じる。うつ病、ナルコレプシー、ADHDなどに用いられる。

□ 6: その他
睡眠薬(睡眠を長くする)、鎮静薬(鎮静作用のある薬、花粉症などに使用される)、抗パーキンソン薬、抗酒薬、脳循環改善・代謝賦活薬などがある。

精神異常発現薬
□ 1: 幻覚薬、多幸化薬など
 

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臨床心理学特論 005 自我機能の分類(L.Bellak.1973)

■ 臨床心理学特論 005 自我機能の分類(L.Bellak.1973) ■

▼ 1. 現実検討(reality testing)
内的な感情と客観的経験を語れる能力。主観的な観念が客観的現実と一致しているか検討する能力。現実検討能力とも呼ばれ、ロールシャッハ・テストの形態水準で表される。

内側から来るものと、外側から来るものとの区別。夢と現実、妄想と幻覚などなど。

▼ 2. 判断(judgment)
自分の行動に関する判断。予想して行動すること。「この行動は、このような危険があるかもしれない」(話したことないのに告白することは、フラれるかもしれない)という予測すること。病態化すると判断が誤る。

▼ 3. 現実感(sense of reality)
外界と自己についての現実感。適切な判断と、誤った判断とを区別できるかどうか。ロールシャッハ・テストの場合、検査の意味を理解できるかどうか。やたら被害的など判断出来ていないことに。

▼ 4. 思考過程(thought process)
形態を持って思考を処理する機能。説明のプロセス。

言語によってコミュニケーションがとれると、病理はそれ程重くない。統合失調症は、言葉のサラダ。

▼ 5. 自律的な自我機能(autonomous functions)
一次的自律的機能とは、知覚、認知、思考、言語、記憶、運動、知能など。
二次的自覚的機能とは、本来は欲動との葛藤の解決を目的として発展し、やがて二次的に「葛藤から自由な領域(conflict-free sphere)」で働くようになった自我機能。

例えば、デートの待ち合わせがどこかわからない状態(葛藤)から、自動的に移動できるようになる(自由な領域)。ここはこういう風にすると、いいということがわかってくる。どれ程酔っ払っても、家に買えることが出来る、などがこれにあたる。

神経症の人は、conflict-freeにならない。日常生活のいろいろなところで引っかかり、葛藤が生じ、神経症になる。

▼ 6. 刺激防壁(stimulus barrier)
生体の内外の刺激に対する閾値の高さ、又は低さ。感受性が歩かないかなど、生理学的刺激も含める。薬の効きやすさ、効きにくさなどもこれにあたる。

▼ 7. 欲動・感情の統御と調整(regulation and control of drive, affect, impulse)
欲動や感情をどれくらいコントロール・調整し、社会に受け入れられる形で表現できるかどうかを表す。サディスティックなもの、攻撃的なもの、健康的なものはサブリメイトされる。それが出来ないとセクハラを。これは心身の発達の問題であるといえる。

▼ 8. 防衛機能(defensive function)
防衛機制の質。神経症的防衛機制(抑圧中心)と原始的防衛機制(分裂・投影同一化・原始的理想化・否認など)。

パーソナリティの見極めのために防衛機能は重要である。防衛は、その人のパーソナリティを表している。ボーダーの患者は、良い対象と悪い対象のうち悪い対象を自分の中に保持できず、相手に投影してしまう。

防衛と適応は連続的なもので、防衛とは、精神内界の自我のバランスをとるためのもので、適応とは、外界に対する対処の仕方である。例えば、外界に対して抑え気味な人は、内に対しても抑え気味であるといえる。

▼ 9: 対象関係(object relation)
精神分析の場合、内的対象関係。外的な他者との関係のあり方をみる。恒常性、両価性があるかどうか。どれくらい分離固体化が出来ているか、子どものころの関係が広い意味での転移がとれているかどうか、自己愛レベルはどうか、自分自身に関心が集まっていないと冷たい関係でしか関われないか。

外的な状況が内的な関係を表しているといえる。アセスメントで重要。

▼ 10: 支配-達成の能力(mastery and competence)
外界の適応能力や現実にどれ程のことを行い、環境を支配できるのか。

▼ 11: 自我を助ける適応的退行(ARISE)(adaptive regression in the service of ego)
自我による自我のための一次的・部分的退行(と進展)
Temporary and partial regression (progression) in the service of ego.
創造的退行(creative regression)・ロールシャッハ・テスト場面での退行がこれに当たる。

健康な人は柔軟なエゴにより、随意的・可逆的な一次的・部分的退行(進展)が可能。一次過程(欲動)と二次過程(社会的)の間を行ったりきたり(退行したり進展したり)することで、エネルギーを補充する。一次過程はエネルギー補給の場。

▼ 12: 自我の統合-統合機能(synthetic-integrative function)
これまでの11個をうまく利用して、ここは退行してもよい、などの自我機能の順位付けを行う機能。人格全体を統合的に維持しようとする。まとまりを持たせようとする。
 

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臨床心理学特論 004 DSMとICDについて

■ 臨床心理学特論 004 DSMとICDについて ■

▼ 1: DSMとは
Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(精神障害の診断・統計マニュアル)。アメリカ精神医学会(APA)により作成された。その主なる目的は、研究を促進し、治療のガイドラインを提供、さらに教育に貢献すること。

1952年、ICD‐6を改変してDSM‐Ⅰを作成。
1968年、DSM‐Ⅱに改訂されたが内容はほとんど変わっていない。
1980年、DSM‐Ⅲの改訂作業はICD‐9作成と提携して行われた。内容的には若干異なるが、だいたいは同じである。

□ 1: DSM‐Ⅲにおける3つの大きな特徴
病因論を排除した症状記述的な方法、操作的診断基準、多軸評価システムの3つ。

1.病因論を排した症状記述的方法
▽ 1: 共通用語
共通用語を用いることで精神科医のよって立つ理論的背景に関わらず議論が可能となる。また、精神科医に限らず多くのスタッフが協調して診断を行うことが出来るようになる。
▽ 2: 神経症という診断名の削除
病因論に関する中立性である。従って神経症という概念には、無意識的葛藤という病因が含まれるため削除
▽ 3: 原因に基づく診断分類
適応障害、外傷後ストレス障害、一般身体疾患、物質による精神障害などがそれにあたる。

2.操作的診断基準
DSM‐Ⅲ以前は、精神障害を従来の体系にならって分類し、個々の疾患の定義や症状を散文的に羅列した。しかし、DSM‐Ⅲの操作的診断基準では、ある疾患を診断するために重要であると判断されえる症状を、診断基準として列挙し、その基準のうちいくつか、あるいは全てを満たしたときに診断する。これにより診断者の主観が入りにくく、診断カテゴリーの信頼性と妥当性の検討が可能となる。

3. 多軸評定システム
各軸はそれぞれ異なった情報に関するもので、臨床家が治療計画を立てたりするのに役立つ。1つの軸ではその人を診断出来ないという観点に立っている。
Ⅰ軸: 臨床疾患
臨床的関与の対象となることのある他の状態
Ⅱ軸: 人格障害
精神遅滞(知的障害)
Ⅲ軸: 一般身体疾患
Ⅳ軸: 心理社会的および環境的問題
Ⅴ軸: 機能の全体的評定

□ 2: DSMの問題点
病態水準や病気の本質となる部分を阻害している。統合失調症と不安障害は同じdisorderとなってしまう。そして、病因はよくわかりませんよ、と。

▼ 2: ICDとは
International Classification of Diseases(国際疾病分類)。世界保健機構(WHO)により作成された。全ての疾患が対象で、精神および行動の障害は第Ⅴ章。その主なる目的は、国家レベルおよび国際的な疫学的調査を行うこと。医学・病院臨床ではこのICDを使用することが多い。

1950年作成のICD‐6において、はじめて精神疾患の症が含まれた。概ね10年毎に改訂、現在は第10改訂版。

□ ICD‐10とDSMとの相違
共通のものを作りましょうというスタンスだが、ICDでは操作的診断基準および多軸評価システムを使用していない。神経症と言う用語が残っている、などの違いが存在する。

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臨床心理学特論 003 遊戯療法(Play Therapy)入門

■ 臨床心理学特論 003 遊戯療法(Play Therapy)入門 ■

▼ 1: 遊戯療法とは
遊戯療法とは、「言語によっては十分に表現するにいたらないクライエントを対象に、遊びを主な表現、コミュニケーションの手段とする心理療法」といえる。

遊びには5つの意味がある。
1つ目は、自己表現としての意味。遊戯療法では能動性、主体性が伴う。従って、それ自体に自己治癒的な意味があるといえる。「遊びを演じつくすことがもっとも自然な自己治癒の方法」とErikson。
2つ目は、欲求の満足としての意味。安全に欲求を満足し、現実をマスターし、コントロールすることが出来る。
3つ目は、カタルシスとしての意味。これは1つ目と2つ目との関連。
4つ目は、コミュニケーション手段としての意味。遊びは大人の言語に代わるもので、言語より象徴的な表現で、読みとり理解する能力を必要とする。
5つ目は、創造性としてのいみ。

このような意味を認め、表現を理解し受け止めてくれる大人が一緒にいることが大切。治療のベースは関係性にある。なお、「遊び」は大人にも必要なものである。Winnicottは、「精神療法とは患者さんを遊べるようにしてあげること」と。

▼ 2: 理論と技法
精神分析的な流れとクライエント中心療法の流れに2分される。

精神分析的な流れは、Freud,Aの「児童分析」と、Klein,Mの遊びは自由連想の変わり解釈することが可能という立場は有名。

一方、クライエント中心療法の流れは、Axline,V,Mの「プレイセラピストに必要な8原則」が有名。
1.よいラポールを確立させる
2.あるがままの受容
3.許容的な雰囲気を作り出す
4.適切な情緒的反射
5.子どもの解決する能力を信じ、自信と責任を持たせる
6.非指示的態度をとり、治療者は子どもの後に従う
7.治療はゆっくり進む過程であるから、じっくり待つ
8.必要な制限を与える

▼ 3: 対象と治療構造
一般的に幼児から小学生(言語表現が十分にできない子ども)。言語表現が出来る年齢でも、非言語的、イメージ的交流の方が有効な場合も。

主に情緒的問題を持った子どもに有効である。器質的・発達的問題(発達障害など)が中核にある子どもでも、二次的な情緒的問題が生じている場合に心身の発達を促進するのに有効。なお、これは適応を促すもので、主訴を治療するものではない。また、身体症状が前景にでている場合は、医学的チェックも必要である。

治療の構造については、外的構造が場所、時間、方法、料金など。内的構造は、治療契約、秘密保持、制限など。

治療構造と必要な制限が与えられると、守られた時空間と本当の自由が保障される。これにより攻撃性を直接的に行動化せず、象徴的水準で表現するようになる。実際の制限とは、治療構造を壊すような行為、治療者への身体的直接的な攻撃、設備や備品を壊すこと、危険なことなど。制限するときは、「ルール」として確固とした態度で示す。枠(構造)を越えざるをえない場合もあるが、その意味を良く考えなければならない。
 

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臨床心理学特論 002 うつ病者の対人特性

■ 臨床心理学特論 002 うつ病者の対人特性 ■

▼ 1:精神力動的視点
Abrahamはうつ病者の口唇気的ファンタジーと一体化願望に着目し、そこに失われた対象への希求とその抑圧、愛と憎しみの両価的な対象関係を指摘している。Radoは、うつ病患者の中核に、母親の胸に抱かれたいという願望とそれが得られないゆえの憎悪、そして愛を求める絶望的な叫びがあるとした。

※ちなみにフロイトは、「うつ」とは攻撃性が自分に向くものと定義。攻撃性はタナトス、つまり死の本能であり、上記のRadoの「愛を求める」行動とは異なる。

▼ 2:社会心理学的視点
Hokansonらは「囚人のジレンマ」に関連した2人で行うゲームをさせ、ゲーム行動とコミュニケーションについて、抑うつ者、抑うつ以外の心理的問題を要するもの、健常者の3群で比較した。その結果、抑うつ者群はそれ以外の群に比して、力強い役割が与えられるときには、ゲーム行動は相手に対して搾取的、非協力的、外罰的となり、またコミュニケーションにおいては自己価値観の低さ、悲しむ、無力感を表出した。逆に抑うつ者に力の弱い役割が与えられたときには、ゲーム行動に特徴的なものは認められなかったが、コミュニケーションにおいてより相手を避難する傾向が認められるようになり、これに応じて相手は抑うつ者に対し優しく機嫌をとるように振舞うようになった。

▼ 3:総合的な視点
Coyneは、うつ病者の周囲に展開される対人関係の様式を次のように定式化した。
1.うつ病者が示す苦しみの背後には他者への依存と攻撃が内包されており、これは周囲の人々に否定的な気分をもたらす。
2.周囲の人々は、表面上は要求に対して応えることで、うつ病者に対して抱く嫌悪感を調整、軽減しようとするが、そこに生じている敵意や拒否感は言語的なものであれ非言語的なものであれ、うつ病者に伝達される。
3.この際、うつ病者が受ける漠然とした、しかしながら明らかな敵意や拒否は、うつ病者の安全喪失感を強固なものとし、その結果さらなる苦しみを示すようになる。

※うつ病者は攻撃性が高い。自責的とは自己に対して攻撃性が向くことであり、他責的とは他者に対して攻撃性が向くことである。向くベクトルは異なるが、いずれにせよ攻撃性が高いことには変わりない。
 

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臨床心理学特論 001 はじめに

■ 臨床心理学特論 001 はじめに ■

この「臨床心理学特論」(一般心理学特論も含む)は、特定の領域についてより掘り下げた内容となっています。

※順不同。
 

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