カテゴリー「第25回 基礎心理学特論」の11件の記事

基礎心理学特論 010 認知心理学

■ 基礎心理学特論 010 認知心理学 ■

認知心理学とは、1950年前後から情報理論の発展やコンピューターの実用化、人工知能研究の試み等の影響下に成立した、人間の高次精神活動つまり認知過程の研究を主領域とする心理学の一分野である。認知心理学は、心理学がこれまでに別々に扱ってきた多くの基礎的な分野(記憶、言語、イメージ、学習、思考など)を統合的に扱う。認知科学という学際的学問領域の1つ。

認知心理学が成立した背景には、行動主義に限界が見えはじめたこと(条件付けにおいて心的過程の介在を仮定せざるを得ない、生物学的制約の問題、人間の意識過程の役割を無視できない、などなど)、周辺諸科学(情報科学、神経科額など)が発展したこと、コンピューターの進歩により人工知能研究が進んだことなどがあげられる。

認知心理学の特徴は、3つ。

1つ目は、モデル化とコンピューターシミュレーション。従来の実験においては別個に扱われていた人間の認知活動を一連の情報処理過程とみなし、コンピューターをモデルとして心的表象のレベルで記述しようとする試みである。

2つ目は、認知科学の一領域であること。認知科学とは、知を解明しようとする科学である。特徴としては知的活動を心的表象のレベルで分析しようとすること、コンピューターを心の1つのモデルとすること、学際的であること、などがあげられる。認知心理学は、この認知科学の中でも中心的な役割を果たしている。

3つ目は、認知科学者が研究対象とするべき12の主題のほとんど全領域に心理学がまたがっている点である。この12の主題とは、信念、システム、意識、発達、感情、相互作用、言語、学習、記憶、知覚、行為実行、技能、思考。
 

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基礎心理学特論 009 行動主義

■ 基礎心理学特論 009 行動主義 ■

ワトソンが提唱した行動主義は、行動を要素的レベル反応に分解し、複雑な行動も要素的な刺激(S)と反応(R)の関係に還元して考えることができるというものである。1920年代から1970年代まで「行動主義の時代」とされる。

▼ 1.ワトソン
アメリカの心理学者で、行動主義を提唱したことで知られる。1912年、キャッテルの招きによるコロンビア大学の講演で行動主義を提唱。ヴントの意識心理学を批判した。1915年、35歳でアメリカ心理学会(APA)の会長に就任するが、1920年、離婚問題で学会を去り実業界に転じた。

□ 1.基本的立場
心理学の目的は行動の予測とその支配であり、心理学は客観的、実験的な自然科学の一部門であるから、行動だけを問題にすべきであり、意識や内観は排除されなければならない。

行動は反応という要素からなり、反応は腺の分泌と筋肉の運動からなる。反応はそれを引き起こす刺激によって決定論的に決まる。従って、心は行動の随伴現象に過ぎない。

刺激→反応→行動→心

□ 2.ワトソンの研究
恐怖の古典的条件付け、アルバート坊やの実験が有名

▼ 2.新行動主義
新行動主義は、次の3つの思想的立場の影響を受け誕生する。
 ・哲学における論理実証主義
 ・物理学における操作主義
 ・ゲシュタルト心理学

新行動主義を積極的におしすすめたのはトールマンである。トールマンは、ワトソンの単純はS-R説に対して、SとRを媒介とする過程Oを考え、S-O-R説を提唱した。つまり、個体は特定の目標に向って指向的に行動するものであり、個体に内在する目標や状況の認知をその媒介過程の内容として考える必要があるとした。

□ 1.新行動主義に共通するワトソンとの相違点
 ・ワトソンよりも洗練された方法論で体系的な理論構成を目指した
 ・対象を分子的ではなく、巨視的として捉えた(ゲシュタルト的)
 ・刺激と反応の関係を機械論的にではなく、力動的に捉えようとした
 ・心理学を生理学に還元しようとせず、心理学のレベルで構築しようとした

□ 2.新行動主義の有名人
有名人は、トールマン、ハル、スキナーの3人。

▽ 1.トールマン
マサチューセッツ工科大学卒業後、ハーバード大学で学位を取得。ドイツ留学時にゲシュタルト心理学に触れる。SとRの間に媒介変数Oを組み込むことや、「サイン・ゲシュタルト」、「認知地図」などの概念を提唱した。

▽ 2.ハル
アメリカの心理学者。ハルの公準、動因低減説など。

▽ 3.スキナー
アメリカの心理学者で、オペラント条件付けの創始者。ハーバード大学で学位を取得。スキナーは条件刺激と強化の与え方(強化スケジュール)によってすべての学習行動を説明できると考え、刺激と反応を媒介する過程を問題としなかった。スキナーにとって、個体は空虚な存在に過ぎず行動が依存しているのは直接的な環境であり、従って環境条件を統制できれば行動を統制できると考えた。

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基礎心理学特論 008 個人差の研究

■ 基礎心理学特論 008 個人差の研究 ■

個人差の研究で有名人は以下の12人。

・ガル(骨相学)
・シャルコー
・ダーウィン

・ゴールトン
・ビネー
・キャッテル
・ターマン
・ヤーキーズ
・ウェクスラー

・スピアマン
・サーストン
・ギルフォード

▼ 1.フランツ・ヨーゼフ・ガル
脳は心の機関であると考え、機能局在の考えに基づき骨相学を着想した。骨相学とは、頭蓋骨の形によって人間のパーソナリティや知性がわかるという説で、19世紀欧米に広く普及した。

科学的な裏付けはなく、やがて信用をなくし、忘れ去られていった。

▼ 2.シャルコー
フランスの神経科医で臨床精神医学の父。サルペトリエール病院のスタッフに加わって精神科の診療所を開設し、この診療所は当時最高の評価を受けた。専門は、ヒステリー、催眠、失語症の研究。

シャルコーのもとには世界中から弟子と研究者が集まった。最も有名な弟子はフロイト。

▼ 3.ダーウィン
イギリスの博物学者。全ての生物は自然選択の作用によって時間をかけて進化するとの立場から、現代進化論の基礎をきづいた。

ダーウィンは「種の起源」(1859)で、自然選択(自然淘汰)を次のように述べている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あらゆる生物は、生存できる以上の子どもを産むため、必然的に生存競争が生じる。子どもの間には個体ごとの違いがあるため、生存競争においてはより適応した個体が生き残る。この過程の集積によって変種が生じ、変種が新しい種の発端になる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

つまり、種の進化をもたらす「自然選択/自然淘汰」、「適者生存」の鍵となるのは、個体差に存在し、生存確率を高める遺伝的変異をもつ種は繁栄するという考え方である。

▼ 4.ゴールトン
優生学の創始者で、チャールズ・ダーウィンの従兄弟。遺伝と人体測定に興味をもち、身長、体重、体力など人間の特徴に関する数多くの統計を集めた。

メンタルテストを提唱する。精神現象の分析ではなく、全体的な結果に着目し多人数からデータを取った。その結果の処理に統計的方法を導入。実用化するために、多くの項目と器具を開発した。

※優生学
優生学とは、人間の遺伝についての研究から派生した考え。同じ血統には多くの優秀な人物が出ていることを調査で明らかにし、優れた才能は遺伝すると結論。すぐれた両親の子を多くすることにより、人類の遺伝学的形質を向上させることを目的とした。人間間にも優劣の差があると主張。

ちなみにこの優生学は、1925年頃から人種差別をしていること、主観的で偏見にとらわれた論拠の上で成立していること、科学的精密さが欠けていることなどを指摘され、厳しい批判にさらされる。

今日、優生学はまったく評価されていない。

※ダーウィンと同じ血筋で自分もここまで有名人だと、劣等遺伝子を排除しようとする気持ちがわからないわけではない。また、優生学がここまで厳しい批判の対象とならざるをえない事実は、目を背けたくなるような事実を優生学が照らしているからと思わなくもない。

▼ 5.ビネー
フランスの心理学者。フランスの小学校の特殊学級設置のため教育当局の諮問委員会に属し、「異常者の知的水準診断の新手法(ビネー=シモン式知能検査)」を考案した。

この知能検査は、年齢と共にしだいに難度の高い問題が解けるようになっていくという発達の一般的事実に基づき作成されたもので、当該年齢の子どもの大半が解答できる6問ずつの問題によって各精神年齢を定義し、子どもがどの年齢の問題まで解けたかによって精神年齢を判定する。

このビネー=シモン式検査は子どもが正常児であるか、または知的遅滞児であるか、という子どもの知能水準を測定することが主眼である。

※ビネーは、知識を単一の能力とみなさず多面的で高次な精神活動の複合と考えた。

▼ 6.キャッテル
アメリカ的な実験心理学の基礎を作ったのが、このキャッテルである。ヴントの元で研究助手を務め、個人差に着目した。その後ゴールトンに出会い精神検査/メンタルテストの研究をはじめた。

▼ 7.ターマン
1916年、ビネー=シモン式知能検査を改訂し、スタンフォード=ビネー改訂版を作成。適応年齢の範囲を広げて健常児の知能測定をはじめ、シュテルンの知能指数(IQ)という考えを導入して、検査結果をIQで表した。

この知能指数(IQ)は、IQ=精神年齢÷生活年齢×100で表される。平均的な子どもは100。

▼ 8.ヤーキーズ
アメリカの心理学者・霊長類学者。アメリカの第1次世界大戦参戦時に軍隊用の集団式知能検査を作成した。α式が言語性で、β式が非言語性。

▼ 9.ウェクスラー
ルーマニア生まれの心理学者。幼児から児童までしか測定できなかったビネー式知能検査の欠点を補い、さらに知能の因子構造を意識した知能検査を開発した。対象年齢によって、幼児用、児童用、成人用に分けられる。

・WISC(WISC-R)知能診断検査法
・WAIS成人知能診断検査法
・WPPSI知能診断検査法

※機会があればWISCを受けることをお薦めする。自分の知的機能に関する長所や短所を同時に把握することができ、自分の知的機能に合った勉強法を見出すことが(たぶん)できる。

▼ 10.スピアマン
イギリスの心理学者。34歳で心理学を志し、ヴントに弟子入り。知識の二因子説を提唱する。知識に因子という概念を導入し、すべての知的活動に共通に働く一般因子(g因子)と、相互に独立し個々の知的活動のみに特有の特殊因子(s因子)からなると考えた。

▼ 11.サーストン
アメリカにおける心理測定分野の第1人者。ギルフォードらと同じく、知識を構成している因子を研究し、知能の多(群)因子説を提唱。一般因子としてではなく、7つの群因子である基本的精神能力因子(言語理解・語の流暢性・数・記憶・知覚速度・帰納的推理・空間視覚化)であるとした。

▼ 12.ギルフォード
アメリカの心理学者。因子分析により、扱う情報の内容、必要とされる情報の操作、情報処理の所産の3次元からなる知能の構造モデルを提唱。それぞれ内容は4つの情報、操作は5つの思考、所産は6つの概念から構成され、これらの組み合わせ120種により知的処理を表現できると考えた。

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基礎心理学特論 008 ゲシュタルト心理学

■ 基礎心理学特論 008 ゲシュタルト心理学 ■

ゲシュタルト心理学とは、ヴントにはじまる構成主義心理学へのアンチテーゼとして展開した心理学である。

ヴントの構成主義は以下の2つの前提の上に組み立てられている

 ・全体は要素的内容の総和である
 ・個々の刺激と感覚との間には1対1の対応がある

これらに対し、部分や要素に対する全体の優位性を掲げたのがゲシュタルト心理学である。ゲシュタルト心理学では形態・形/ゲシュタルトという概念を提唱した。ゲシュタルトとは、「要素に還元できない、まとまりのある1つの全体が持つ構造的特性」である。

研究対象は、記憶、思考、要求と行動、集団特性の研究にまで展開した。

※要は、「部分ではなく、全体だ!」とする一派。

▼ 1.ゲシュタルト心理学の3巨頭
ウェルトハイマー、ケーラー、コフカの3人。

□ 1.ウェルトハイマー
ウェルトハイマーの「運動視に関する実験的研究」を提出した。実際には光の点滅に過ぎないものが見かけの上で光の運動に見える「仮現運動」に関する実験は、感覚の寄せ集めによって現象を説明するヴントの心理学を打破するための実験であり、ゲシュタルト心理学成立の年となるものであった。

ポイントは2つ。

・恒常仮定の否定
・「ゲシュタルト」概念の提出

恒常仮定とは、刺激と感覚の間には固定した1対1の対応があると思い込む説。ゲシュタルト心理学者は、この主の仮定が潜んできる全ての要素主義的側面を否定した。

ウェルトハイマーはゲシュタルトについて「全体には特有の相互関連が存在し、要素や部分、その集合から決まるわけではない。全体のなかのある部分がどのように現れるかは、全体がもつ性質(内的構造法則)によって決まる」と述べた。

キーワードは、以下の3つ。
 ・仮現運動
 ・体制化・群化
 ・プレグナンツの傾向

仮現運動とは、物理的運動が存在しないのにも関わらず、知覚される見かけの運動という。本当は動いていないのだが、動いているように見える現象。日常場面では映画や踏切の警報機など。

体制化・群化とは、視野の中に多くの対象が同時に存在するとき、お互いにまとまりを持って近くされる現象。

プレグナンツの傾向とは、体制化が単純な方向に向かって起こる傾向をいう。視野の中で形の知覚が成立する場合、一定の秩序を持ったまとまりとして知覚されるが、この時全体としてもっとも単純なまとまりをなそうとする。

□ 2.ケーラー
ゲシュタルト学派の中心人物の一人。
1910年、コフカと共にフランクフルトのウェルトハイマーを訪ね、ゲシュタルトの構想を聞く。1917年に「類人猿の知恵試験」、1940年に「心理学における力学説」を発表。

「類人猿の知恵試験」で、チンパンジーの課題解決が試行錯誤的に行なわれるのではなく、洞察によって行なわれることを明らかにした。洞察とは、問題状況についての知覚の再体制化が生じること。

□ 3.コフカ
ゲシュタルト心理学理論をはじめて英語圏に紹介したゲシュタルト心理学中心人物の一人。ケーラーの唱えた同型説を取り入れつつも、現象や行動の世界の分析を重視した。

コフカは著書の中で、ゲシュタルト心理学は「直接経験のできるかぎり素朴で純粋な記述」を目指す学問であることを述べ、「環境の場」を地理的環境と行動的環境とに二分して、行動的環境の厳密な記述こそ心理学の目的であるとしている。

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基礎心理学特論 007 アメリカ心理学・後篇

■ 基礎心理学特論 007 アメリカ心理学・後篇 ■

▼ 1.機能主義心理学のルーツ
機能主義は環境への適応を重視する進化論思想とプラグマティズムの哲学を背景にしてアメリカで発展した1派。

※ヴント直系のイギリス心理学者ティチナーは自らを構成主義と呼び、これに対して心的活動を環境への適応という面から心理学を扱おうとする立場を機能主義と呼び批判した。

□ 1.ティチナー
イギリスのチチェスター生まれの心理学者。35年間ヴントに師事する。ヴントの内観法を唯一の方法論として手続きを厳密に定める。統覚を否定し、すべての要素を感覚に還元しようとした。

ちなみにいろいろ批判した割に構成主義は、このティチナーで終わる。

 ○機能主義
 ×構成主義

▼ 2.シカゴ学派(機能主義)
有名人は、デューイ、エンジェル、ミードの3人。

□ 1.エンジェル
デューイに学び、ジェームズの下で博士号を取得。ティチナーの構成主義に対し、機能主義の立場を明確にする。弟子に行動主義提唱者ワトソンがいる。

▼ 3.コロンビア学派
有名人は、キャッテル、ソーンダイクの2人。

□ 1.キャッテル
アメリカ的な実験心理学の基礎を作ったのがキャッテルである。ヴントの元で研究助手を務め、個人差に着目した。その後ゴールトンに出会い精神検査/メンタルテストの研究をはじめた。

□ 2.ソーンダイク
アメリカ実験動物心理学の開祖。動物の知能をめぐり、ネコを用いた問題箱の実験から、問題解決は推論や洞察によるものではなく、試行錯誤により刺激と反応が連合する過程であると主張した。

またこうした学習の原理を効果の法則とよび、満足をもたらす行動がその直前の行動と結びつくと説明。この効果の法則で示された学習の原理は「強化」であり、新行動主義に影響を与えることとなった。

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基礎心理学特論 006 アメリカ心理学・前篇

■ 一般心理学特論 006 アメリカ心理学・前篇 ■

▼ 1.アメリカ心理学のルーツ
有名人は、ジェームズ.Wとハルの2人。20世紀になるとアメリカの心理学は、ドイツの構成主義心理学とは別に独自の傾向を帯びるようになる。

□ 1.ジェームズ
アメリカの哲学者・心理学者。プラグマティズムを思想的に大きく発展させた。ジェームズは、最初の著作「心理学原理」(1890)によって、哲学の1分野でしかなかった心理学を、現代の実験心理学の地位まで高めた。アメリカ最初で最後の独創的心理学者。

※プラグマティズムとは
プラグマティズムとは、その命題が実際に役に立つかどうかにかかっていて、思考の目的は行為を導くことにあり、観念の重要さはその結果によるという考え方。役に立たない考えを否定し、真理はそれを求める時や場所、目的によって決まると主張した。

ドイツ的な要素観の心理学に反対し、意識とは断片がつなぎ合わされたものではなく、「意識の流れ」という言葉に表されるような、常に変化し続ける一連の流れであることを強調した。さらに意識の構造よりも機能が重要であるとし、意識の機能を環境への適応という観点から扱う立場を示し、機能主義心理学への道を開いた。

またジェームズは、情動体験について「何かを見て、体が震えるから恐怖を感じる」という過程を考え、環境に対する身体的な反応が、情動体験の原因であるとした情動の抹消起源説/ジェームズ=ランゲ説を主張したことでも知られている。

□ 2.ホール
アメリカ心理学の発展に大きな貢献を果たした人物の一人。ヴントに学び、ジョンズ・ホプキンス大学に初の正式な心理学実験室を創設。アメリカ心理学会(APA)の初代会長。発達心理学の開祖とも呼ばれる。

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基礎心理学特論 005 ドイツ心理学

■ 基礎心理学特論 005 ドイツ心理学 ■

作用心理学で有名なのは、ブレンターノ、シュトゥンプ、ミュラーの3人。

▼ 1.作用心理学
作用心理学とは、心理学の対象は精神作用であるとし、内容心理学に対する心理学である。

内容心理学では、心理学を連合主義のように心を感覚により与えられた内容によって構成されたものとみなし、その構造を研究する。

これに対し作用心理学では、心を「見る」とか「思い出す」とか「・・・する」という働きだと考え、その働きを研究するのが作用心理学である。従って、表象(感覚や想像)、判断、愛憎(感情や意思)という意識の働き、つまり作用を研究すべきとした。

ブレンターノにより提唱され、弟子たちに伝えられた。

□ 1.ブレンターノ
ドイツの哲学者。哲学と神学を学び司祭になるが、ビュルツブルク大学教授を経て、ウィーン大学教授を務める。作用心理学の祖。

同時代のヴントの内容心理学と対照に位置付けられる心理学で、感覚の内容や構造ではなく、感覚する働き、作用を主題とした。例えば、見る働きには見られる対象があり、音楽を聴く働きには聞かれる対象がある。ブレンターノは実験的研究方法をとらず、「意識の内容を研究するのは現象学、意識の作用を研究するのが心理学」であるとした。

意識に関する考え方は現象学の創始者フッサールに、哲学(アリストテレス研究)はハイデッガーに大きな影響を与えた。

□ 2.ミュラー
ドイツの実験心理学者でゲッチンゲン大学教授。ゲッチン大学をライプチヒ大学に対抗する実験心理学の中心地にした。

▼ 2.ヴュルツブルグ学派
ヴントは、心理学の実験対象は意識(純粋感覚)、イメージ(簡単感覚)から構成されるとし、思考を含めた高次の心的過程についての実験は不可能であると考えた。しかし、キュルペは、思考の要素を見つけ出そうとしてヴュルツブルグ大学において「新」実験学派を創始した。

□ 1.キュルペ
キュルペは歴史学を学びライプチヒ大学に入学するが、ヴントを知り感銘を受け師事する。ヴントのもとで助手、講師を務めた後、ヴントが実験的研究では不可能とした高次の精神機能、特に思考・判断についての要素を見出そうとする。

キュルペは、思考が心像(心的イメージ)を伴わないことを無心像思考により立証した。ヴントとは異なり、思考の働きを必要とするような内観法を用い、感覚内容やイメージを伴わない思考が存在することを示した。

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基礎心理学特論 004 ヴントの心理学

■ 基礎心理学特論 004 ヴントの心理学 ■

哲学者のカール・ヤスパースは、人間はただ存在しているだけではなく、存在していることを知っているのである、と述べた。どのように知覚し解釈するかが、その人の後の行動を支配している。従ってある人の行動を理解するためには、客観的な外的状況を知るだけでは不十分である。

ドイツのヴィルヘルム・ヴントやアメリカのティッチナーら初期の心理学者は「心的印象」を評定し、この19世紀末の「新しい」心理学は内省的な方法を用いた。

ヴントは、1879年にライプチヒ大学に公認の心理学実験室を設立、心理学の独立記念日である(と考える場合が多い)。ヴントの心理学の特徴は、以下の3つ。

▼ 1つ目の特徴は、形而上学と心理学を分離したこと
ヴントにとって心理学は、形而上学ではなく、経験可能な事柄を扱う経験科学である。

※形而上学とは
形而上学とは、直接経験することのできない究極的実在を扱う哲学の一部門。形而上学は、ものが「存在する」とはどういうことかという、きわめて抽象的な問題を論じる。ちなみに形而下学とは、はっきりとした形があり、感覚の働きによってその存在を知ることの出来るものを扱う哲学。

▼ 2つ目の特徴は、直接経験の学であること
自然科学で扱うのは経験する主体を捨てた「間接経験」であるが、心理学とは経験する主体を含めた「直接経験」を扱う学問であると規定した。

▼ 3つ目の特徴は、心理学の対象は意識であること
直接経験とは個人の意識であることから、心理学の対象は必然的に意識となる。

ヴントの実験は主として内観法を用いる。内観法とは、意識の自己観察のことで、実験的に統制された条件下で自分の意識内容を組織的に分析する方法である。その後、内観により心的要素を抽出し、その結合としての心的複合体を考え、「創造的総合の原理」を提唱した。これがヴントの心理学が要素主義的な構成心理学、意識心理学といわれる由縁である。

また心理学の目的は、複雑な意識過程を分析して、その要素を抽出し、その要素間の統合を支配する法則を明らかにすることとしている。

後のゲシュタルト心理学はこの要素主義を、行動主義心理学は意識主義を批判するところから誕生した。しかし、今日の認知心理学は再び被験者の意識過程を重視するようになり、行動主義によって一蹴されたヴント心理学を見直す動きもある。

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基礎心理学特論 003 生理学的研究と精神物理学

■ 基礎心理学特論 003 生理学的研究と精神物理学 ■

感覚・知覚の生理学的研究と精神物理学について。

▼ 1.感覚・知覚の生理学的研究
有名なのは、ミュラーとヘルムホルツの2人。

ミュラーは、特殊神経エネルギー説を提唱。各感覚受容器は、その感覚に特有の感覚エネルギーをもっており、受容器がどんな刺激で興奮させられても生じる感覚は同じであるとした。

ヘルムホルツは、ヨハネス・ミュラーから当時支配的だったカント的な自然哲学に関するアプローチを学ぶ。当時自然哲学では、生理的な機能は5感では感知できない生気、もしくは物理法則によらない力で説明されていた。この理論に反対したヘルムホルツは、両者を感覚器官によって知覚できると考え、生理的なエネルギーを機械的に測定し、把握出来ることを確信するに至った。

有名なのは、以下の3つ。

 ・ヤング=ヘルムホルツの三色説
 ・共鳴説
 ・無意識的推論

ヤング=ヘルムホルツの三色説とは、網膜上にそれぞれ異なる物質に反応する3種の物質を仮定し、それらの興奮比率により色の感覚が生じるとする説。赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色を想定する。この三色説は混色、補色の事実、またに二代色覚異常を説明するなどの点で優れているが、対比や残像の説明に問題を残している。この原理は現在のブラウン管テレビに応用されている。

共鳴説とは、内耳の特定の器官が調律された共鳴機として機能すると考え、提唱された。音の感覚という同一のモダリティの中でも、高さや音色における感覚の違いは、刺激される神経部位の違いや、それらの組み合わせの違いによるという説。1863年に「聴覚論」を出版し、これにより生気論者は論破された。

※生気論とは、生命現象を説明する哲学的理論で、機械論と対立する。生命の発生、構造、機能は科学では説明できないとする立場。

無意識的推論とは、最初は意識的に行われていたのが、連合と反復の結果、無意識的に行われるようになったとするもの。

▼ 2.精神物理学
精神物理学は、心理物理学ともいわれ、一般的に刺激の物理的性質と、その刺激によって生じる感覚・知覚などの心理的過程との調的関係を研究する実験心理学の分野。

フェヒナーの「精神物理学原論」に由来する。

ウェーバーは、フェヒナーのライプチヒ大学の先輩教授に当たる。皮膚の圧力と温度に対する感覚、そして耳に関する研究によって、実験心理学の道を切り開いた。

「ウェーバーの法則」と呼ばれる感覚の法則は、刺激と、それによって引き起こされる感覚との数量的な関係を公式化したもの。人が感覚的に弁別(違いを見分けて区別)できる最小の差異(弁別閾⊿I)というものは、原刺激(I)の値に応じて比例的に変化するものであるという法則。

⊿I(弁別閾)/I(原刺激)=K(一定)

ウェーバーの後輩教授で実験心理学の始祖といわれるフェヒナーは、心身関係に関する独特の哲学を持ち、その背景の下に精神物理学を創案した。

フェヒナーによると、精神物理学とは、「身体と精神、さらに一般的には物質世界と心的世界、物理世界と心理的世界の関数的依存関係に関する精密理論」であり、「物理学と同様に経験と、それらの経験的事実の数学的結合の上に基礎付けられなければならない」とした。

さらに精神物理学を外的精神物理学と内的精神物理学とに2分。外的精神物理学とは、身体の外的側面と心的過程の間接的な関係を扱い、物理学から知識と方法論を借りる立場である。一方、内的精神物理学とは、身体の内的機能と心的過程の直接的な関係を扱い、生理学や解剖学から知識と方法論を借りる立場である。

ポイントは、以下の3つ。
・精神物理学論
・フェヒナーの法則
・精神物理学的測定法

精神物理学原論は、物質世界と精神世界の関連の解明を目指したもの。フェヒナーの法則とは、ウェーバーの法則を下に感覚量と刺激量との関係についての公式。E=K(定数)logIで、「感覚の強度(E)は、刺激の物理的強度(I)の対数に比例して変化する」というもの。精神物理学測定法は、極限法、恒常法、調整法の3つ。

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基礎心理学特論 002 心理学史

■ 基礎心理学特論 002 心理学史・近代以前からヴント心理学成立まで ■

▼ 1.近代以前
アリストテレスは、ある程度体制化された心理「学」を誕生させる。経験的事実を重んじ、心理学を体系的に論じた。プラトンは「心の座」を脳としたが、アリストテレスは心臓とした。

ヒポクラテスは四体液説(血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁)、ガレノスは気質論(多血質、粘液質、胆汁質、憂鬱質)を展開。

トーマス=アキナスは神学大全の中で、心理学を進学の一部としていたが、アリストテレスの心理学を土台に人間の本質、能力、情念などについて心理学的思想を繰り広げた。

▼ 2.近代からヴント心理学成立まで
※大陸合理論とは、懐疑論(広く真であることを疑う態度)を深めることにより、どうしても疑いようのない立脚点をもとめ、そこから演繹(いくつかの前提から1つの結論を導くやり方)的に哲学体系を打ち立てようと考え。理性主義、生得主義ともいう。

※帰納とは
個々の事例から一般的な法則を導き出すこと。演繹の逆。

デカルトは、合理主義的帰納法を用いた哲学により、近代哲学の父とも呼ばれる。「コギト・エルゴ・スム(われ思う、ゆえにわれあり)」が有名。意識主義、生理心理学の淵源。

全ての存在は心とモノとに分かれるという心身二元論を提唱し、人間の身体に機械論の観念を適用した。プラトン以降多くの学者は心身二元論の立場であったが、デカルトは身体をはるかに重視し、精神はただ思考作用があるのみとした。

※機械論とは
機械をモデルにして宇宙を完全に説明しようとする哲学上の考え方。一般に機械論は唯物論と同じ意味で、自然主義と同義に使われることもある。自然主義とは、神や超自然的な知識をもちいず、化学や物理学の機械的な法則により自然現象を説明する思想。

※唯物論とは
物質を究極的な実在とする哲学上の説。この学説では、意識現象は神経系の物理的・化学的変化によって説明される。観念論(唯心論)に対立。

ライプニッツは、統覚の概念を提唱。モナド論。ライプニッツが主張する哲学によれば、宇宙は無数のモナドからなる。モナドとは表象と欲求という心的働きをもつ単純体。

▼ 3.連合主義心理学
連合主義心理学は、イギリスの経験論哲学に由来する心理学である。経験主義、連想(連合)主義とも呼ばれる。

イギリス経験論哲学とは、方法論としては帰納法(多くの事例や観察から一般的な結論を導き出す手法)、認識論的には経験説の立場をとる。人間の認識は経験によって獲得されるものであり、認識は経験の観察と分析から導き出されるとする。

連合主義心理学では、心理現象をすべて連合によって説明しようとする考え方をする。意識もその要素である観念の連合の法則により構成されている。連合は、青い水を見ると海を思い出すなど、知覚をきっかけにその知覚と関係ある概念が想起される現象をいう。

有名人は、ホッブズとロックの2名。

ホッブズは、「リヴァイアサン」を著し、全ての精神作用は究極において「感覚」に還元可能であり、心像や観念は感覚の余波であるとした。ちなみに「リヴァイアサン」は、自己保存をはかる利己的な存在としての人間が、各人の自己保存の自然権を行使すると、自然状態において「万人の万人に対する戦争」が起こる。そこで、人間は理性を発見する自然法によって各自の自然権を放棄する社会契約を結び、その遵守を保障する共通の権力としての国家を設立する、というのがその主旨。

ロックは、経験主義を創始したイギリスの哲学者。心理学上の連合主義の基礎を築き、認識そのものの起源および限界を経験に基づいて究明。ロックの経験主義は、知識の探求において感覚経験の重要性を強調。最初に経験主義学説を擁護したのはフランシス・ベーコンだが、ロックは上記の「人間知性論」において、経験主義学説に体系的な表現を与えた。

ロックは、生まれたばかりの人間の心はタブラ・ラサ(何も書かれていない板)であり、その上に経験によって知識が刻み付けられていくものと考え、直感も生得観念の理論も信じていない。「人は生まれながらの生得観念を持たず、全ての観念は生まれてから得られたものである」とする。また、ロックは、人間は全て生まれつき全であり、自立的であり、平等であると主張する。

その他、バークリー、ヒュームが有名。

バークリーは、物質は精神から独立に存在しえないと主張。一方、感覚現象は、人間の精神に常に知覚を呼び起こす神の存在を前提とするとも考えた。「存在することは、知覚されていることである」という言葉が有名。

ヒュームは、懐疑主義と経験主義の発展に貢献した哲学者。自然科学も形而上学も否定し、一切の知識は経験に基づくとした。病弱。全と悪の概念は合理的なものではなく、自分の幸福への関心から生まれると主張し、最高の道徳愛は博愛、つまり利他的な社会福祉の尊重であるとした。またヒュームは、富は貨幣ではなく商品に基づくという思想を展開し、経済に対する社会情勢の影響を認め、その経済理論によってアダム・スミスとその後の経済学者に影響を与えた。

19世紀に連合主義の心理学は完成期に達する。しかしヴントらの実験心理学により下火に。

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基礎心理学特論 001 はじめに

■ 基礎心理学特論 001 はじめに ■

この「一般心理学特論」(臨床心理学特論も含む)は、特定の領域についてより掘り下げた内容となっています。

※順不同。
 

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