心理学用語集・臨床 150 ヒステリー
■ 心理学用語集・臨床 150 ヒステリー ■
子宮(hysteron)というギリシア語を語源とするヒステリーは、ヒポクラテス以来長い歴史をもち、定義も多義的で変遷を遂げている。一般的な定義は以下の5つほど。
1.神経症の下位概念のヒステリー型神経症(転換型と解離型)
2.心因反応としてのヒステリー原始反応と固定化
3.ヒステリー性格者の人格反応
4.疾病利得が顕著に見られる神経症ないし心因反応
5.広義の心身症の一型
※1.の「ヒステリー型神経症」が現在最も一般的なヒステリーの概念。詳しい内容は「臨床心理学各論 006 ヒステリー」を参考に。
※現在、ヒステリーという語は、正式には使われていない。転換ヒステリーは、「転換性障害」、解離ヒステリーは、「解離性障害」としてDSMに記載されている。
・転換(性)ヒステリー →転換性障害
・解離(性)ヒステリー →解離性障害
▼ 1.ヒステリーの変遷
古代
・「体内で子宮が動きまわる婦人病」
・「子宮が充血し、局所的に窒息が生じる病気」
中世
・「子宮に鬼神が宿る病気」
・ヒステリー特有の身体症状は、スチグマータと呼ばれ魔女狩りの対象に
19世紀中頃
シャルコーが1970年代に「病理解剖学的な器質的病変のみられない機能障害」としてのヒステリーの概念を確立し、その要因として遺伝的変質を重視した。この時期はじめて女性特有の病気だとみなされてきたヒステリーが、男性患者も確認される。
シャルコーの弟子ジャネは、心理的緊張と共に生じる意識野の狭まりと、人格的意識の解離によってヒステリー特有の症状を引き起こすという解離説を唱えた。
フロイトは、ベルネーム(催眠治療によるヒステリーの精神療法)、ブロイアー(催眠浄化法)の方法を追試しながら精神分析療法を創始したが、その途中でブロイアーとの共同研究を発表した。
フロイトは、はじめ防衛の概念を用いてヒステリーを説明したが、その後、防衛を捨て抑圧の概念に切り替える。「ヒステリーは幼児期に未解決なエディプス・コンプレックスの思春期以後の再生、つまり幼児的な近親相姦願望と、その抑圧の力動的葛藤によって生じる」と考えたからである(しかし、この考えは後に修正される)。
その後、シュナイダーやクレッチマーらがそれぞれの立場からヒステリーの概念を用いているが、しだいにフロイトの神経症論が定着し、ヒステリーをその一病型として位置づけ、転換型と解離型を分ける傾向が進んだ。
1980年のDSM-Ⅲにおいて、従来のヒステリーの名称のもとにまとめられていた各障害は、
・身体型障害の一型としての転換障害
・解離型障害における心因性健忘、心因性遁走、多重人格
などに収められることとなった。
■キーワード
▼提唱者
シャルコー
1970年
催眠によりヒステリーの心因性を明らかに
1895年
フロイトとブロイアーが共著で「ヒステリー研究」を表し、ヒステリーの発症要因として精神的外傷があることを示唆
▼定義
解決が困難である問題に直面した時、認知したり、言語化することで自我を防衛することが出来ず、その代わりに意識消失、マヒ、失声などの症状が表れることがある。これをヒステリーという。ヒステリーは、脳の器質的障害の結果ではなく、心理学的な障害であり、その症状は回復可能である。
ヒステリーは、痙攣発作、運動麻痺、感覚麻痺などの知覚・運動機能に障害を生じる転換性ヒステリーと意識消失、記憶障害、朦朧発作、幻覚などの精神機能に障害を生じる解離性ヒステリーに2分される。
ヒステリーという用語は、DSM-Ⅲの分類で消失し、現在のDSM-Ⅳでは、転換性ヒステリーは主に身体表現性障害の転換性障害に、解離性ヒステリーは解離性障害に区分されている。
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