■ 臨床心理学特論 031 治療プロセス上のアセスメントの役割 ■
■ 1.精神力動的専門アセスメント ■
専門アセスメントで取り上げられる主なトピックは以下の通りである。
▼ 1.欲動のアセスメント(リビドー的欲動及び攻撃的欲動)
心理的発達段階、発達水準、(主にリビドーに関しての)対象関係の質、量、攻撃性の配分
▼ 2.自我のアセスメント
A.防衛機制 :優先される防衛、適切性、効率
B.対象関係の質 :関係する能力の幅
C.現実との関係 :適応能力
D.思考プロセスの性質 :抽象対具象、空想の利用
E.欲動の調節とコントロール :欲動資質の発達、超自我機能、衝動性、欲求不満耐性、注意持続時間のアセスメント
F.自律機能 :知能、記憶(短期及び長期記憶の過誤や歪み)、運動機能(調節と身体言語の使用)、知覚(器質的あるいは心理的歪み)、言語
G.統合機能 :経験を統合し組織化する能力のアセスメント
H.年齢と発達に相応した自我機能のアセスメント
▼ 3.超自我のアセスメント
罪悪感対外的権威への恐れの性質と程度の全体的アセスメント
▼ 4.子どもの発生的―力動的見立て
下記の事項に関わる葛藤の主な源泉についての見当
・心理性的発達段階
・子どもに関わる外的及び内的葛藤
・主たる同一化とそれによる適応の促進度
▼ 5.治療方針の設定
■ 2.治療のための情報 ■
アセスメントの利用法は、治療目標の設定である。たいていの状況では、症状や行動上の問題は、受け入れられなかった内的衝動ゆえに生成してきたものである。こうした「否定的」なあるいは禁止された自己の部分に対する反応様式は、自らの内的生活の洞察によって、根本的な修正が可能となる。そこで診断プロセスにより、本能生活のどの面が最も問題なのかを特定する必要がある。
1つの目標は、治療を通して禁止された衝動を子どもの心的生活の中で表現させ、話し合い、再統合させていくことである。さらに自我の面、すなわち受け入れられない衝動の意識化を回避したり、抑圧したり、防衛したりするために患者が用いる特別な反応の面にも目を向ける必要がある。これらの自我反応(抵抗など)は、子どもが自分の厄介な面から逃避するために用いる典型的な反応で、治療場面で使用する抵抗パターンとなって現れる。それゆえ特定の抵抗を予測する必要があり、予測できていれば治療の中で出現した際に治療者はその歪んだ反応を説明することで、子どもは人格の主要部分たる自我機能を自覚していけるようになる。
治療過程で現れうる転移の性質も、予測できる領域といえる。各発達段階での重要な対人関係や子どもの成育史における過去の重要な事件を理解しておけば、関連する要素が出現した際に治療者が言語化や再構成を行なうことができる。治療者が、転移での自分の役割と転移が生じる文脈を予測できるのである。
※子どもが主観的にどのように体験しているのかが大切である。
■ 3.プレイの中心的意味 ■
大人と子どもの心理療法の主な違いは、治療の時間に患者が感情的なものをどのように持ち込むか、その素材の形にある。大人は言語表現を、子どもはプレイを用いる。子どもは様々な面で情動生活に密着している。プレイという手段は、こうした世界を引き出すのみならず、そこにまとまりのある体系付けられた形態を与える機会を提供する。プレイすることそのものには変化を起こす力はなく、治療者がプレイに介入し、プレイを活用することが決定的なポイントである。臨床家はしばしばプレイの進展がある一定順に継起していく経験をする。この継起とは以下のような順である。
▼ 1.初期非関与の段階:舞台設定
子どもは遊ばないか、あるいは一人遊び、そのプレイは理解できなかったり、活用できないものであったりする。しばしば治療者は困惑し、理解不能の状態に陥る。子どもの症状や「心配ごと」、行動について多少「お話」しだしたりする。ワーク初期の課題は、子どものワークが「意味のあるプレイ」となっていくようにゆっくりと援助することである。意味のあるプレイとは、エスの派生物と自我機能との間に想像的なバランスが保たれ、両者の間を往復しやすいプレイのことである。
▼ 2.早期情緒的関与の段階
治療者はゆっくりとプレイに心が向うようになり、プレイの中に出てくる特定の意味深いメタファーを共有しはじめる。子どもがますます身をいれるようになってくることがはっきりし、治療者との結びつきは、強いリビドーに向けられる性質を帯びはじめる。
子どもの治療では多くの場合、治療者が遊び手になることが、「自我のための退行」をはぐくむうえで非常に役に立つことがある。自我のための退行とは、大人の患者と治療者が情緒生活を吟味できるように、患者の思考に潜む通常のタブーや障壁を除々にゆるめ、それらを言語化していくことをさす。治療時間中の自由な構造や禁止された本能的素材に対する治療者の受容的態度、セッションそれ自体の境界は、大人、子どもいずれのワークにおいても、初期の「自我のための退行」を促進する。
▼ 3.中心的ファンタジーの出現
子どもはゆっくりと重要な意味を持つ空想世界を、とても熱中して練り上げていく。しかし、治療者はその意味に漠然と気付くだけかもしれない。そもそも変化はどのようにして起こるのか。(再演された)新たな転移状況の中に特別な機会は存在する。その時に治療者が解釈したり、患者が支配的な無意識の考えや不安を理解するのを手助けする機会がでてくる。
治療者が、患者を支配する恐怖の意味を言葉にするとき、患者の合理的な部分(自我)は、潜在的にはその意味を把握できる。そしてこの理解(洞察)が恐怖の影響力を緩和する。洞察ができるようになると行動機能が変化するのである。
▼ 4.徹底操作
しばしば遅ればせにではあれ、治療者は明るみに出てくる素材の様々な意味を統合し、介入する。それは治療の成果を安定させたり、治療プロセスをコントロールしたりするのに役立つ。
心理療法における「徹底操作」の概念は、症状に変化をもたらすのに必要とされる一連の多様な解釈のことをいう。変化は解釈の1つだけで起こるのではなく、いろいろなレベルの無意識的意味が解きつくされる(=徹底操作される)まで、症状形成にあずかる様々な要素を、別々の文脈で繰り返し語る必要がある。
▼ 5.まとめ
治療過程を観察すると、大人と子どもの心理療法には明らかな類似点がある。患者が素材を生み出す方法や、治療時間中の防衛/抵抗の性質に関するアセスメントもそうであるし、治療者の共感能力、治療時間の境界を確定する能力の双方によって進行する「自我のための退行」を生み出すプロセス、そして過去の外傷的な出来事を転移の中で安全に「反復強迫」できるようにする治療者へのリビドー的愛着などがそうである。
主な相違点は、コミュニケーションの形態である。子どもの言葉より具体的で、患者-治療者間の対話はしばしば活動と行動、すなわちプレイという言葉でなされる。行為を必要とするため、治療者は部分的に子どもの監督の元で演者になる。治療者は、演者としては治療関係の中で転移的側面を、観察者としては子どもとの関係の中の治療同盟の側面を体現している。
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